たまに、夢に見ることがある。
……違うな。目を瞑って寝ている間に、思い出す過去がある。
それは、大抵が苦い思い出。嫌な記憶。楽しい時の思い出は忘れるけれど、楽しくなかった思い出は、忘れられないように人間の脳ができているからだ。
『ねえ。なんで今年の新入部員募集のポスター、田雁さんのになったの』
『さあ。顧問が激推ししたとか聞いたけど』
『部員はほぼ、あんたので決まりって言ってたのに』
『何かがよかったんでしょうよ、何かが』
『わかんないわねー。その何か』
『あたしらにはわかんないもんなんだよ』
――そんなことないよ。だって、みんなが持ってるものだもん。
『“欲求”じゃないですか』
『『え?』』
『俺にはこのポスター、何かに飢えてて、すごく渇望してる感じがしますけど』
『……そう?』
『……確かに言われてみればそう見えるかも』
『それに多分ですけど、この写真を撮った人、すごく好きなんじゃないですかね、写真を撮るのが』
『……そうね』
『好きだろうね、絶対』
けど、それをあなたは塗り替えてくれた。
夢の中の記憶だけじゃない。現実で、やってのけてくれた。
『次のコンテストのテーマ。今から会議するから、コーヒー全員分用意して。お子様舌の田雁は、自分で準備しろよー』
『……毎回言わんでもわかってますって』
『あ。じゃあ俺もお願いできますか』
『……え?』
『……無類のコーヒー好きが、またどうした桐生。あいつが飲むのは所詮二番煎じ』
『あれ。知らないんですか? 田雁先輩が入れてくれたお茶、すごく美味しいんですよ』
『え? あ、あの、桐生君……?』
『俺も、今日はお茶な気分なので。……他に田雁先輩の注いでくれたお茶飲みたい人います? あ、でも数少なそうなんで早い者勝ちですけど』
いつも、いちいち棘のある言い方で弄ってくる部長から、庇ってくれた。そう言ってみんなの視線から、守ってくれた。



