すべての花へそして君へ③


 たまに、夢に見ることがある。
 ……違うな。目を瞑って寝ている間に、思い出す過去がある。

 それは、大抵が苦い思い出。嫌な記憶。楽しい時の思い出は忘れるけれど、楽しくなかった思い出は、忘れられないように人間の脳ができているからだ。


『ねえ。なんで今年の新入部員募集のポスター、田雁さんのになったの』

『さあ。顧問が激推ししたとか聞いたけど』

『部員はほぼ、あんたので決まりって言ってたのに』

『何かがよかったんでしょうよ、何かが』

『わかんないわねー。その何か』

『あたしらにはわかんないもんなんだよ』


 ――そんなことないよ。だって、みんなが持ってるものだもん。


『“欲求”じゃないですか』

『『え?』』

『俺にはこのポスター、何かに飢えてて、すごく渇望してる感じがしますけど』

『……そう?』

『……確かに言われてみればそう見えるかも』

『それに多分ですけど、この写真を撮った人、すごく好きなんじゃないですかね、写真を撮るのが』

『……そうね』

『好きだろうね、絶対』


 けど、それをあなたは塗り替えてくれた。
 夢の中の記憶だけじゃない。現実で、やってのけてくれた。


『次のコンテストのテーマ。今から会議するから、コーヒー全員分用意して。お子様舌の田雁は、自分で準備しろよー』

『……毎回言わんでもわかってますって』

『あ。じゃあ俺もお願いできますか』

『……え?』

『……無類のコーヒー好きが、またどうした桐生。あいつが飲むのは所詮二番煎じ』

『あれ。知らないんですか? 田雁先輩が入れてくれたお茶、すごく美味しいんですよ』

『え? あ、あの、桐生君……?』

『俺も、今日はお茶な気分なので。……他に田雁先輩の注いでくれたお茶飲みたい人います? あ、でも数少なそうなんで早い者勝ちですけど』


 いつも、いちいち棘のある言い方で弄ってくる部長から、庇ってくれた。そう言ってみんなの視線から、守ってくれた。