喫茶店から引き摺り出され、大通りを歩く。テールランプが、何台も何台も通り過ぎていく。
手を繋いでいてくれたのは初めだけで、今桐生君は私の前をゆっくりと歩いている。多分だけど、歩幅を私に合わせて。しばらく歩いていると、少し火照っていた頬と緊張が落ち着いてきた。
「でも、一体全体、何からどう話せばいいのやら……」
「………………」
「だってだってだって、あれとかそれとかこれとか、全部全部聞かれてたってことで」
「………………」
「だったらもう、どう話すかとかじゃなくて話してしまってるじゃん! わあどうしよう!」
「ストップ。先輩ストップ」
「へ?」
「全部洩れてる。夜分遅くに近所迷惑」
おう……。またやってしまったぜ……。
てか、え? 全部って……本当に全部? だったらもう本気でやばいんじゃ……。
「聞きたいことはいろいろあるけど」
「はひっ……!」
「今日は、もう遅いからまたにしますよ」
「……ごめんなさい」
「怒ってないですよ。呆れてもないです」
「嘘ばっかり……!」
「いいえ本当。……ただ俺も、ちょっと言い出すタイミングが掴めなくて……」
「……桐生君?」
「俺の方こそ、すみません」
「ええ!? な、なんで桐生君が謝るの……」
それはもしかして、私の思いに対する“すみません”ですか!? 早急過ぎて、まだ心の準備も何もできてないんですけど!?
けれど珍しく歯切れの悪い彼は、「それは……」と、私の視線から逃げるように大通りの方へと視線をやる。そして、そのまま手を上げた。
「タクシー代は、また俺の給料から引いておきますので」
「え!? ば、バレ、て……」
「コンテスト前にすみません。少し俺に時間をくれますか」
「あ、あの、それは、もちろん大丈夫だけど……」
「また連絡します」と。それだけ言って彼は、捕まえたタクシーから離れていった。
「……お連れ様はよろしいんで?」
「……みたい、です」
「じゃあ、どちらまで行きましょう」
「はい、えっと……」



