すべての花へそして君へ③


 喫茶店から引き摺り出され、大通りを歩く。テールランプが、何台も何台も通り過ぎていく。
 手を繋いでいてくれたのは初めだけで、今桐生君は私の前をゆっくりと歩いている。多分だけど、歩幅を私に合わせて。しばらく歩いていると、少し火照っていた頬と緊張が落ち着いてきた。


「でも、一体全体、何からどう話せばいいのやら……」

「………………」

「だってだってだって、あれとかそれとかこれとか、全部全部聞かれてたってことで」

「………………」

「だったらもう、どう話すかとかじゃなくて話してしまってるじゃん! わあどうしよう!」

「ストップ。先輩ストップ」

「へ?」

「全部洩れてる。夜分遅くに近所迷惑」


 おう……。またやってしまったぜ……。
 てか、え? 全部って……本当に全部? だったらもう本気でやばいんじゃ……。


「聞きたいことはいろいろあるけど」

「はひっ……!」

「今日は、もう遅いからまたにしますよ」

「……ごめんなさい」

「怒ってないですよ。呆れてもないです」

「嘘ばっかり……!」

「いいえ本当。……ただ俺も、ちょっと言い出すタイミングが掴めなくて……」

「……桐生君?」

「俺の方こそ、すみません」

「ええ!? な、なんで桐生君が謝るの……」


 それはもしかして、私の思いに対する“すみません”ですか!? 早急過ぎて、まだ心の準備も何もできてないんですけど!?
 けれど珍しく歯切れの悪い彼は、「それは……」と、私の視線から逃げるように大通りの方へと視線をやる。そして、そのまま手を上げた。


「タクシー代は、また俺の給料から引いておきますので」

「え!? ば、バレ、て……」

「コンテスト前にすみません。少し俺に時間をくれますか」

「あ、あの、それは、もちろん大丈夫だけど……」


「また連絡します」と。それだけ言って彼は、捕まえたタクシーから離れていった。


「……お連れ様はよろしいんで?」

「……みたい、です」

「じゃあ、どちらまで行きましょう」

「はい、えっと……」