「けどねマスター。今告白したところで結果は目に見えてんですよ」
「そうかな?」
「そうなんです。だって、好きな子がいるのに勝てるわけないじゃないですか」
「ほう。……あのトーマがねえ」
「あんな可愛い子……、私勝てる気がしません」
「そんなことないよ。お嬢さんも十分魅力的」
「あの子に勝てそうなところなんて……、チチくらいしか」
「……内面も、十分綺麗だよ」
そしていざ、自分の心を決めたはいいものの、全くと言っていいほど勝算が見付からず。ここのところ、言い付けを破ってはバーに通い詰め、マスターに相談に乗ってもらっていた。
「……こうなったら、もういっそ押し倒してしまおうか悩んでて……」
「今の子の恋愛には疎いから。今日はもう少ししたら、お嬢さんの同年代の子が来るんだけどね」
常連になってわかったけれど、夜のバーはマスターともう一人の二人体制。いつもは素敵なおじ様のような人だったから、今日来る人は恐らく初めましてだ。
「どうかしたんですか?」
「あ。来た来た」
けれど、私はその人を知っていた。
「あ。……また会いましたね」
「……えっと?」
「違うよシズル、このお嬢さんは初めまして」
「あれ? そうでしたっけ。すみません、顔覚えるの苦手で」
「あ、いえ。お気になさらず」
……ような気がしただけで、気のせいだったらしい。まだ、既視感は完全には拭えないけれど。
シズル――そう言われた人は、確かに同年代くらいに見える。そして薬指に付いているのは紛う事なき結婚指輪!
「先輩!」
「あはは。よくわかりましたね」
「へ?」
「僕、桜大の三年。医学部なんですよ」
「ええ!?」
「あれ? もしかして、わかってて先輩って言ったわけじゃない?」
あはは、と可笑しそうに笑う彼だったけれど、まさかまだ学生の身だったとは。さては、年上と結婚したな。やるじゃないですか。
「さて。……それで? 桐生君を落としたい……んでしたっけ」
「そうですね。ハッキリ言ってしまえば」
「……うん。イケるんじゃないかな」
「そんな無責任な!」
「え? 結構本気だったんだけど」
「どこから出てくるんですかその自信は……」
「逆に、どうしてそんなに自信ないの?」
「そりゃもちろん! 彼には好きな子がいるからですよ!」
「え? そんな話……知ってました? マスター」
「いいえ? 存じ上げませんね」



