すべての花へそして君へ③


「でも、私が作った料理を食べてくれた!」
(※のかどうかちゃんとしたところはわかんないけど)

「しかも、お弁当にしてまで食べてくれた!」
(※ここんとこもはっきりとはわかんないけど)

「そんでもって、独り占めしてたなんて……!」
(※これは本当だと思いたい)


「こんなのもう、もっと図々しくなるしかないよねー」


 そうして無理矢理始まった、王子の胃袋掴んじゃおう作戦! 何度王子にやめろと言われても決行してやったぜ! この納豆のように、何度怒られ貶されようとも、ネバネバと粘ってやったぜい!


「……あ! 私の好きなほうじ茶アイス! 桐生君買ってきてくれたのかな?」


 図々しい所業を繰り返す結果、今じゃもう何も言われなくなったけど、これは無言の了承と思いたいところだ。


「……こんなの、お礼にもなんないけど」


 ま、本人も無意識みたいだし、助けたとか思ってないんだろうからいいんだけどさ。私の勝手な自己満足だし。
 それに、ただ黙ってるだけの私とは違って、桐生君は私にいろんなことしてくれた。隠し撮りの許可分は荷物持ち分だし。直接言ったところで受け取ってくれないんだもん。嫌なら受け取れバカヤロウ。


「……けど、桐生君にとって、私ってなんなんだろ」


 図々しい女? まあ間違いじゃないわな。
 都合のいい女? ある意味ではそうかもしれないけど、一般的では……だって、そういう関係ではないし。
 彼女気取りの女……? いやいやいや! そこまで図々しいことは考えてないから!


「……荷物持ってくれて、冷蔵庫の食材で勝手にご飯作ってくれて、ちゃちゃっと少しだけ掃除してくれて……」


 それ聞いた大半の人は、家政婦か何かだと思うだろうな。


「……どれだけ、大事なんだろう。あの子のこと」


 ま、それはさておいて。明日のお弁当のおかずはある程度できたし。ほうじ茶アイスの分、ちゃちゃっとお片付けといきますか。


「そして本日は、未知の境地。王子様のプライベートルームへと侵入しちゃいたいと思いまーすっ」


 と、言ってもここばっかりは何かしようものなら怒られるでは済まされないと思うので。ちらっとどんな様子かだけ見るだけ。


「……お、お邪魔しまーす」


『もしかしてストーカー? なんて、思ったりしませんでした?』

 ふとそんな言葉がよぎるもんだから、一瞬引き伸ばされた写真の数々を想像してしまったけれど。


「……なんだあ」


 あまりにもシンプルすぎて拍子抜け。男の子の部屋っていう感じではあるけれど。ベッドの下にも何もないし。
 今時の男子大学生とは、少し違うよね。同級生たちと比べても、やっぱりちょっと、大人びてる。達観してる。周りより一歩引いて、物事を見てる。


「本当の中身はあんなんだから、脳味噌は悪巧みでいっぱいなんだろうさー、っと」


 おっと危ない。棚にぶつかって危うく置いてあった写真立て落とすところだった。


「あ。でも男の子であんまり写真立てって、イメージないかも」


 年齢=彼氏いない歴なんで、本当のところはさっぱりだけど。
 一体誰が映っているんだろう! もしかしてまた例の子かな! それとも、また別の……


「……また、別の子だ」


 しかも、なんで。……なんで二人とも、ウエディングドレスとタキシード姿で――?