すべての花へそして君へ③


 ――と、思っていた3秒前の私を、後ろからハリセンで打っ叩いてやりたい。


『……その。ありがとう桐生く』

『あー時間かかり過ぎた。これ補講完全遅刻じゃん』

『え? あ、ご、ごめんね……?』

『え? あ、いえ。別に。もう遅いんで』


 あれ? なんか、ゴシゴシ唇拭かれたんだけど▼


『……あ、あの?』

『でも、……まさかまだ白馬の王子とか夢見てる奴がいるとは』


 今度は、私が自分の目をゴシゴシした▼
 ついでに耳の穴もよくかっぽじった▼


『桐生君……?』

『なんですか。まさか、足りないとか言わないでくださいよ。結構きついんですから』


 え? 何が? 口臭が?
 あとで、しっかり歯をゴシゴシ磨くことにしよう▼


『……あの、桐生君』

『俺にここまでの恥晒させたんです。これで約束破ったら容赦しませんからね』

『まさか、それが本性……とかじゃないよね?』

『……何言ってるんですか。先輩』


 私は、何か危ない匂いを感知した▼


『ど、どういうこと? 私の白馬の王子様どこにやったの?』

『やったも何も、いるでしょ。目の前に』

『……じゃあ、今までの全部、嘘だったの』

『……』

『やさしくしてくれたのも、……笑ってくれたのも』

『……解釈はご自由に』

『……ひどい』

『……酷い? 酷いのは一体どっちですかね』


 そうして見せられた写真の数々に、私は白目をむきそうになった▼


『……な』

『キスの分は、黙っておいてもらう分として』

『……な、なんで!?』

『自分の逆パターンがある可能性、ゼロとか思ったわけ』

『!?』

『さて、隠し撮りしてた分は何してもらいましょうか。荷物持ちとかでいいかな普通に』

『普通って何!?』

『ああちなみに、約束破ったら日本の地面踏めなくなると思ってくださいね』


 国内から追放って、それって完全に死亡フラグ立ちますよね? 私アウトドア好きじゃないですからね? サバイバルとか無理だから!


『先輩の大好きなキスは、更新制にしましょう。よかったですね、一回ぽっきりじゃなくて』

『ちょ、待って桐生君』


 そして私は、笑顔の向こう側に何があるのかを察した▼


『その代わり。……約束、ちゃんと守ってくださいね? 先輩』

『……は、ハイ』


 こいつは、王子の皮を被った悪魔だと▼


『てか、手汗どんだけ掻くんですか。俺の手べちゃべちゃなんですけど』

『た、大変申し訳ありません……』


 誰だよ、心理学専攻してるとか言った奴! 私だよ!!