そんな素敵な言葉にズッキュン胸を打たれていた私の前髪をそっとかき分け、次は軽く音を立てて。アワワ……と慌てている私に小さく笑いながら、持ち上げた毛先に一つ。耳にかけて現れた頬へもう一つ。顔中へ降り注いでくるキスの雨に、まだしてもないのに息が苦しくなる。どきどきと、耳の奥で心臓が鳴ってるのが聞こえる。
『……指。邪魔だよ?』
『も、勘弁して……』
『ダメ。……どけないと、すごいのするよ』
『すっ、……すごいの……』
なんだろう。ちょっと、やってもらいたい気がしなくもないけど。
『初めての人には、ちょっと刺激が強いかも』
『はっ、……初めての人用で、お願いします……』
『……目、つむって』
『……うん』
なんでかな。このキスは、約束事を守ってもらうためのもので。彼にとっては本当に無意味で、普通なら価値すらないに等しいものなのに。
……どうして、ここまで優しくしてくれるんだろう。私なんかのために。
いつか、その瞳の奥にある、彼が隠している何かが、どんなものか知りたいな。
(……でも、そんなに悪いものじゃない気がする)
心理学専攻してる私が思うんだもん。きっと、大丈夫。
『……ん』
きっと、初めて桐生君にキスをされた時のことは、いつまでも鮮明に思い出せると思う。だって、こんなあったかくてやさしいキス。そうそう上書きなんてできないもん。



