すべての花へそして君へ③


『ちょちょちょ! 彩芽! やばい! やばいのいた!』

『なんですと!?』


 そもそも彼と初めて出会ったのは入学式。(※一方的に)割と顔面偏差値高めな人が多い中、ずば抜けて格好良かったのが彼――桐生杜真君だ。
 まるで白馬の王子様が、絵本から飛び出てきたようで。進学してからしばらくは、友人たちとその話で盛り上がっていた。

 でも、そうやって遠巻きに見ているだけ。そりゃ、関われるなら関わりたい! けど、あんなきらきらした場所に堂々足を踏み入れられるほど、私は愚かじゃない。ちゃんと、自分の立場を弁えてる。


(……シンデレラストーリーは、女の子誰もが憧れるけどね)


 どんな偶然や事故に巻き込まれたとしても、決して交わることなんてないと。そう思っていた。

 変化が起こったのは、入学式から数週間後。写真部の新入生歓迎会。そこに、何故か白馬の王子がいた。
 え? あれ? 見間違い? あ! もしかして部活間違えてます?

 そんな風に思っていたのは一瞬。浮かんだ失礼な疑問は、瞬く間に吹き飛んだ。
 彼が愛用しているという一眼レフが、かなり使い込まれていたからだ。そしてまさかのまさか、私も持ってる同じカメラ!


(これって、もしかして運命?!)


 なーんていうのも、一瞬で吹き飛んでいきましたけど。


 現れた新星は、瞬く間に部内のアイドルと化し。部内では勿論部外でもいつも、男女問わず人に囲まれるほどの人気者。見た目だけではなく人当たりも柔らかで、これぞ正真正銘の王子様。カメラが趣味の、見た目完全に根暗な私とじゃ、住む世界が違うんだ。
 ま、全然根暗でないけどー。心の中はいつもハイテンションですけどー。

 新歓では近付くことすらできなかった、そんな王子な彼とこれといった接点が全くと言っていいほどないまま、数ヶ月が過ぎたある日。事件は起こった。


(やばいやばいやばい! これは後世に称えられるほど史上最高の出来映え! いずれ文化遺産になっちゃうかもしれない)

『いやだから、嫌ですよ。俺向いてない――』

『――グフッ!』

『……え?』


 阿呆なことを考えていた私は、部室の前で誰かと容赦なくぶつかってしまった。後々の私は、もうちょっと可愛い声を出しておけばよかったと思うこととなる。


『いっ、たたた……』

『(グフッて言ったこの人……)すみません、大丈夫ですか』

『あ、あはは。はい。だいじょう、……ぶ』

『……あの?』

『えっ!? 王子!?』

『(……王子?)いえ、桐生です』

『あ。そ、そうだよね? ごめんね桐生君』

『いえ、俺の方こそ急に扉開けたんで』


 いい写真が撮れたからって。すぐ現像しようと思って走っていたのが悪かったんだ。