どういうことだろうか。わからず首を傾げていると、彼はスプーンにプリンを乗せ、私の口の前に持ってくる。……なんで、死ぬほど好きなこと知ってるんだろう。本当、桜李さんってすごい。
「それで? おれの何が知りたい? 医者になりたい理由かな?」
「……それも勿論知りたいです。でも、それはもっと先でもいいかなって」
「……聞きたくなくなった?」
「いえ。寧ろその反対です」
あなたのことを、ちゃんと知りたいから。あなたのことを、ちゃんと受け止めたいから。そしてあなたに、私らしい、私の言葉を贈りたいから。
だから今は、いろんなことが、もっと知りたいんです。
「……そっか」
「たちまち、好きなタイプを聞かせてください」
「え?」
「……」
「……んーと、可愛い子かな?」
「(可愛い……)好きな食べ物は?」
「んー。可愛い子、かな?」
「(か、可愛い子……?)じゃ、じゃあ、特技とか」
「特技? ん~と、いろいろできないことはないんだけどお~」
「??」
そんな風にもったいぶった彼は、にこっと笑って口の中に含んでいたそれを、お皿の上に出して見せた。
「知ってる? ヘタを舌だけで結べる人はキスが上手なんだってえ! これも一応特技に入るのかなあ?」
「……えーっと。お、お上手なんですか?」
「ん? ……確かめてみる?」
「……! え、っと……」
「んー?」
「……そ、それはまた、追々……」
「追々……?」
「その、……桜李さんが私を、好きになってくれてから……」
「………………」
「……? 桜李さん?」
この時、桜李の頭の中には先程自分が口にした言葉が再生されていた。
『……正解は、桃ちゃんと二人で来たかったからだよ?』
「うん」
『全然大人じゃないよ。……気になる子を弄ぶくらいには』
「うん」
『怒るに決まってるでしょ。……桃ちゃんのこと、おれはもう、特別な子だと思ってるんだから』
「……うん」
……言ってる。ちゃんと、言ってる。
「桜李さん?」
「……」
そして桜李は気付く。このくそ真面目な優等生には、上手く言葉が届かなかったらしいと。自分たち二人の間には、少々ズレが生じているのだと。
「……ま。いっか!」
そして再び桜李は気付く。そんなところも、彼女は可愛いのだと。
よーし、これからまたいっぱいいじって遊んであげよう。わかるまで、と。



