「……あ、あの。か、隠していたのには訳が……」
「ごめん桃ちゃん」
「えっ?」
「怖がらせたよね」
「ち、違います……!」
「桃ちゃん……」
「桜李さん、あの、私もうちゃんとわかってます」
「……」
何故、あの時彼が、私を止めたのか。
彼女のことを守るためじゃない。私のことを、私の心を、守ってくれたんだ。
「……もしあの時、桜李さんが止めてくれていなかったら。きっと私一生後悔します」
学校が始まったら、一番に謝りに行こう。あの時は、カッとなってしまってごめんなさいと。そう思うくらいにはすでに、後悔してる。でも、反省できているのは、彼が止めてくれたからだ。
「……だから。あの時のことは、桜李さんが悪いわけでは……」
「ううん。おれが全面的に悪い。勝手に君のこと弄んで、勝手に拗ねて、勝手に感情的になったから」
「……あの、話が上手く……?」
「……嬉しかったんだよ」
「え……?」
「桃ちゃんが、……怒ってくれたこと」
「大人として失格でしょ?」と、彼は少しむすっとした表情で、プリンの上に乗ったさくらんぼに手を伸ばし、そのまま口の中に放り込んだ。
「……どうせ桃ちゃんは、おれが大人とか思ってるんでしょ」
「え?」
「見た目はこんな、……三輪車が似合いそうなのにって」
「そ、それは冗談で……!」
「全然大人じゃないよ。……気になる子を弄ぶくらいには」
「……え?」
「……あのね、昔好きだった子と桃ちゃんが重なって見えたのは、本当に一瞬だけだから」
もぐもぐ。
「確かに、その子のこと好きだって言ったよ? だからって、おれに似た奴が好きとか言われたら、嘘でもちょっとむかつくじゃん」
もぐもぐ。
「怒るに決まってるでしょ。……桃ちゃんのこと、おれはもう、特別な子だと思ってるんだから」
もぐもぐと。
食べている姿がなんか可愛くて。いじけてる姿は、もっと可愛くて。
「……桜李さん……」
「……ん?」
「私、桜李さんのこともっと知りたい」
「……」
「まだ、全然知らないです。プリンが好きなことくらい」
「……それは、おれじゃなくて君のこと」



