すべての花へそして君へ③


「……あ、あの。か、隠していたのには訳が……」

「ごめん桃ちゃん」

「えっ?」

「怖がらせたよね」

「ち、違います……!」

「桃ちゃん……」

「桜李さん、あの、私もうちゃんとわかってます」

「……」


 何故、あの時彼が、私を止めたのか。
 彼女のことを守るためじゃない。私のことを、私の心を、守ってくれたんだ。


「……もしあの時、桜李さんが止めてくれていなかったら。きっと私一生後悔します」


 学校が始まったら、一番に謝りに行こう。あの時は、カッとなってしまってごめんなさいと。そう思うくらいにはすでに、後悔してる。でも、反省できているのは、彼が止めてくれたからだ。


「……だから。あの時のことは、桜李さんが悪いわけでは……」

「ううん。おれが全面的に悪い。勝手に君のこと弄んで、勝手に拗ねて、勝手に感情的になったから」

「……あの、話が上手く……?」

「……嬉しかったんだよ」

「え……?」

「桃ちゃんが、……怒ってくれたこと」


「大人として失格でしょ?」と、彼は少しむすっとした表情で、プリンの上に乗ったさくらんぼに手を伸ばし、そのまま口の中に放り込んだ。


「……どうせ桃ちゃんは、おれが大人とか思ってるんでしょ」

「え?」

「見た目はこんな、……三輪車が似合いそうなのにって」

「そ、それは冗談で……!」

「全然大人じゃないよ。……気になる子を弄ぶくらいには」

「……え?」

「……あのね、昔好きだった子と桃ちゃんが重なって見えたのは、本当に一瞬だけだから」


 もぐもぐ。


「確かに、その子のこと好きだって言ったよ? だからって、おれに似た奴が好きとか言われたら、嘘でもちょっとむかつくじゃん」


 もぐもぐ。


「怒るに決まってるでしょ。……桃ちゃんのこと、おれはもう、特別な子だと思ってるんだから」


 もぐもぐと。
 食べている姿がなんか可愛くて。いじけてる姿は、もっと可愛くて。


「……桜李さん……」

「……ん?」

「私、桜李さんのこともっと知りたい」

「……」

「まだ、全然知らないです。プリンが好きなことくらい」

「……それは、おれじゃなくて君のこと」