それから、手を繋ぎ直した私たちは、桜李さんが行きたいという場所へと向かっていった。歩き、バスを待っている間、そして車内。彼は、約束通り、私の手をずっと離さないでいてくれた。お陰で汗でぐっちょりだ。もう知らないけど。
「よし! 到着~」
「え? ここですか?」
つい最近、お世話に……というか、ご迷惑掛けたんですけど。
「いらっしゃいませー……、あら。いつもありがとうございます」
「そ、その、先日は大変」
「大変お世話になりました。ご迷惑もたくさんかけてしまってすみません」
私に被さるように、何故か彼が私の代弁をしてくれた。もしかして、あの後もう一度このお店に足を運んでくれたのだろうか。だったら、この店員さんの柔らかい笑顔にも納得がいく。
「あと、予約していたアレなんですけど」
「はい。ご準備しておりますよ。お席へご案内しますね」
お願いしま~すと、淡々と何故か話が進んでいるけれど。
何? 桜李さん予約してたの? ああ、だからあかねさんのところは午前中までって言って……あれ。そもそも私、一緒に席について行っていいのかな。
「そわそわしてるね?」
「わ、私、今日は出直してきます……!」
「え? なんで?」
「だ、だって桜李さん、今日どなたかと一緒にここへ来る予定だったんですよね……?」
「……そうだけど、なんで桃ちゃん帰っちゃうの?」
「だ、だってご予約を……。お席をお取りになってたってことは、そういうことじゃ……」
「残念。違います」
「え。……だったらなんで」
「もお。本当にわかんないの?」
「……え……?」
まるで、タイミングを見計らっていたかのように。店員さんが、何かをテーブルへと運んでくる。
「プリン・ア・ラ・モードです」
「……え?」
「ごゆっくりどうぞ」
「え。あ、はいっ」
明らかに、私の目の前に置かれたそれ。それの向こう側で、楽しそうに笑っている彼へ、何とか視線を動かした。
「……正解は、桃ちゃんと二人で来たかったからだよ?」
「えっ? ……な、なん、で……」
「だって本当は、食べたかったんでしょう? プリン大好きだもんね?」
「えっ」
「それから、本当は可愛いものも好き」
「……!」
「あと、結構お子様っぽいご飯も好きでしょう。ハンバーグとか」
「……」
「言ったでしょう? 我慢は体によくないよって」
「桜李、さん……」
な、何故そんなことまで気付かれているんだ。
どこ。どこから漏れたのその情報!



