すべての花へそして君へ③


 それから、手を繋ぎ直した私たちは、桜李さんが行きたいという場所へと向かっていった。歩き、バスを待っている間、そして車内。彼は、約束通り、私の手をずっと離さないでいてくれた。お陰で汗でぐっちょりだ。もう知らないけど。


「よし! 到着~」

「え? ここですか?」


 つい最近、お世話に……というか、ご迷惑掛けたんですけど。


「いらっしゃいませー……、あら。いつもありがとうございます」

「そ、その、先日は大変」

「大変お世話になりました。ご迷惑もたくさんかけてしまってすみません」


 私に被さるように、何故か彼が私の代弁をしてくれた。もしかして、あの後もう一度このお店に足を運んでくれたのだろうか。だったら、この店員さんの柔らかい笑顔にも納得がいく。


「あと、予約していたアレなんですけど」

「はい。ご準備しておりますよ。お席へご案内しますね」


 お願いしま~すと、淡々と何故か話が進んでいるけれど。
 何? 桜李さん予約してたの? ああ、だからあかねさんのところは午前中までって言って……あれ。そもそも私、一緒に席について行っていいのかな。


「そわそわしてるね?」

「わ、私、今日は出直してきます……!」

「え? なんで?」

「だ、だって桜李さん、今日どなたかと一緒にここへ来る予定だったんですよね……?」

「……そうだけど、なんで桃ちゃん帰っちゃうの?」

「だ、だってご予約を……。お席をお取りになってたってことは、そういうことじゃ……」

「残念。違います」

「え。……だったらなんで」

「もお。本当にわかんないの?」

「……え……?」


 まるで、タイミングを見計らっていたかのように。店員さんが、何かをテーブルへと運んでくる。


「プリン・ア・ラ・モードです」

「……え?」

「ごゆっくりどうぞ」

「え。あ、はいっ」


 明らかに、私の目の前に置かれたそれ。それの向こう側で、楽しそうに笑っている彼へ、何とか視線を動かした。


「……正解は、桃ちゃんと二人で来たかったからだよ?」

「えっ? ……な、なん、で……」

「だって本当は、食べたかったんでしょう? プリン大好きだもんね?」

「えっ」

「それから、本当は可愛いものも好き」

「……!」

「あと、結構お子様っぽいご飯も好きでしょう。ハンバーグとか」

「……」

「言ったでしょう? 我慢は体によくないよって」

「桜李、さん……」


 な、何故そんなことまで気付かれているんだ。
 どこ。どこから漏れたのその情報!