すべての花へそして君へ③


「……ありがとうございます、あかねさん」

「ちょっと困った奴だけど、よろしく頼むね」

「困った奴だなんてそんな……」

「困った奴だよ本当。仮病でももかチャンを味方に付けたんだからね」

「……え?」

「ちょっとあかね。なんてこと言うの」

「本当のことでしょ」

「言いくるめられる方が悪いんだよ」

「……え?」

「ま、そんな奴だから。あんまり振り回されないようにね。たまには自分から舵を切るように」

「……あ、あの。えっと。その……」


 取り敢えず、いろいろ肝に銘じておきます。


 ――――――…………
 ――――……


 それから、二宮道場を後にした私たちは、微妙な距離を保ちながら歩みを進める。


(そういえば、結局あのままあの時のことには触れてないんだよね)


 そう思ったら、二人でいることがものすごく気まずくなる。
 わかってる。このままじゃダメだってわかってるけど、意識すればするほど、彼の隣を歩くのが。さっきまで普通に喋れてたって言うのに……!


「……わっ!」


 余所見をしていると、危うく道路の溝に落っこちそうになる。落っこちずに済んだのは、桜李さんが私を捕まえてくれたからだ。


「す、……すみません……」

「……大丈夫?」

「は、はい」

「怪我がないならよかった」

「……」

「……」


 わずかに流れた沈黙の後、何を思ったのか。彼は私の手を掴んだまま、テクテクと歩みを進めていく。……え。あの。ちょっと、これって……。


「お、桜李さ」

「今日、可愛いね桃ちゃん」

「……えっ」

「いつもの桃ちゃんも可愛いけど」

「……お」

「今日は、特別可愛い」


 ほ、褒め殺すつもりだろうかこの人は。


「……そ、その、友だちにいろいろしてもらったので……」

「……そっかあ」

「だ、だから、その……」

「ん?」

「……頑張って、よかったです」

「……」