「……ありがとうございます、あかねさん」
「ちょっと困った奴だけど、よろしく頼むね」
「困った奴だなんてそんな……」
「困った奴だよ本当。仮病でももかチャンを味方に付けたんだからね」
「……え?」
「ちょっとあかね。なんてこと言うの」
「本当のことでしょ」
「言いくるめられる方が悪いんだよ」
「……え?」
「ま、そんな奴だから。あんまり振り回されないようにね。たまには自分から舵を切るように」
「……あ、あの。えっと。その……」
取り敢えず、いろいろ肝に銘じておきます。
――――――…………
――――……
それから、二宮道場を後にした私たちは、微妙な距離を保ちながら歩みを進める。
(そういえば、結局あのままあの時のことには触れてないんだよね)
そう思ったら、二人でいることがものすごく気まずくなる。
わかってる。このままじゃダメだってわかってるけど、意識すればするほど、彼の隣を歩くのが。さっきまで普通に喋れてたって言うのに……!
「……わっ!」
余所見をしていると、危うく道路の溝に落っこちそうになる。落っこちずに済んだのは、桜李さんが私を捕まえてくれたからだ。
「す、……すみません……」
「……大丈夫?」
「は、はい」
「怪我がないならよかった」
「……」
「……」
わずかに流れた沈黙の後、何を思ったのか。彼は私の手を掴んだまま、テクテクと歩みを進めていく。……え。あの。ちょっと、これって……。
「お、桜李さ」
「今日、可愛いね桃ちゃん」
「……えっ」
「いつもの桃ちゃんも可愛いけど」
「……お」
「今日は、特別可愛い」
ほ、褒め殺すつもりだろうかこの人は。
「……そ、その、友だちにいろいろしてもらったので……」
「……そっかあ」
「だ、だから、その……」
「ん?」
「……頑張って、よかったです」
「……」



