すべての花へそして君へ③


〖元気出た?〗


「何か、思い当たる?」

「……はい。少し」

「ならよかった。……それと、割と本気の理由としては、話すとなると絶対長くなるからだろうね」

「え? ……あかねさんは、ご存じなんですか?」

「うん。あいつが、声が出せなかった時から、ずっと一緒にいるからね」

「……え?」


“言えないなら、文字にすればいいんだよ。言いたいことなら、尚更ね?”


 声が、出せなかった……?


「……実はさ、おれも昔家族と仲違いしてたことがあってねえ~」


 驚きを隠せないまま急に始まったのは、何故か彼の身の上話。ものすごいいろいろ話してくれるんだけど、いいのかな。初めて会ったのに聞いちゃって。


「おれにはね、画家になりたいって夢があったんだ」

「……画家、ですか?」

「見えないでしょう。実はこう見えて、柔道家空手家画家の三拍子です。……まだまだ未熟者だけどね」

「……すごい……」


「あは! えっへんっ!」と、鼻高々としているあかねさんは、なんだかとっても可愛らしい人だった。桜李さんのお友達だというのがとてもよくわかる。


「けどね、昔は祖父に言いたいことを上手く伝えられなくて。……それをね、助けてくれた人がいたんだ。その人はとっても賢くて料理上手で、でも頑固で我慢強くてちょっぴり寂しがり屋さんなんだけど……」

「……え?」


 その人、確か何処かで。


「その人がね、おれに勇気を分けてくれたんだ。目一杯背中を押してくれたの」

「……」

「けどね、その人が苦しんでいる時、何回手を伸ばしてもその人は、おれたちの手を取ってはくれなかったんだ。……迷惑かけちゃうからって」

「……」


 やっぱり、その人って。


「それでさ、その人おれたちの手は取らなかったくせに、後ろから蹴っ飛ばしてきた足を取っちゃうんだよ。どう思う? これってもう変態だよねある種の」

「……その彼女のこと、あかねさんは好きだったんですか」

「え?」

「……」

「ううん。そうじゃないよ、ももかチャン」


 その人のことは、今も。多分これからも。
 ずっと大好きなんだよ。


「……おれもね? その当時は確かに恋愛だったものが、今は“好き”自体いろんな色や形に変わってるよ。今、恐らくおれが彼女に抱いているものは、親愛に近いものだと思う」

「……」

「『夢みたいって言えること。夢みたいって思えること』」

「……あかねさん、それは?」

「おれが、彼女からもらった魔法の呪文だよ」

「……魔法の、呪文?」


 君がもし、心からそうこぼした時。
 それは、一体どういうことか。考えてみて。


「おれが何を言ったとしても、決めるのは君自身だから。だから、君にはこれだけ伝えておくね」


 頑張って、ももかチャン。君ならきっと、大丈夫だよ。