〖元気出た?〗
「何か、思い当たる?」
「……はい。少し」
「ならよかった。……それと、割と本気の理由としては、話すとなると絶対長くなるからだろうね」
「え? ……あかねさんは、ご存じなんですか?」
「うん。あいつが、声が出せなかった時から、ずっと一緒にいるからね」
「……え?」
“言えないなら、文字にすればいいんだよ。言いたいことなら、尚更ね?”
声が、出せなかった……?
「……実はさ、おれも昔家族と仲違いしてたことがあってねえ~」
驚きを隠せないまま急に始まったのは、何故か彼の身の上話。ものすごいいろいろ話してくれるんだけど、いいのかな。初めて会ったのに聞いちゃって。
「おれにはね、画家になりたいって夢があったんだ」
「……画家、ですか?」
「見えないでしょう。実はこう見えて、柔道家空手家画家の三拍子です。……まだまだ未熟者だけどね」
「……すごい……」
「あは! えっへんっ!」と、鼻高々としているあかねさんは、なんだかとっても可愛らしい人だった。桜李さんのお友達だというのがとてもよくわかる。
「けどね、昔は祖父に言いたいことを上手く伝えられなくて。……それをね、助けてくれた人がいたんだ。その人はとっても賢くて料理上手で、でも頑固で我慢強くてちょっぴり寂しがり屋さんなんだけど……」
「……え?」
その人、確か何処かで。
「その人がね、おれに勇気を分けてくれたんだ。目一杯背中を押してくれたの」
「……」
「けどね、その人が苦しんでいる時、何回手を伸ばしてもその人は、おれたちの手を取ってはくれなかったんだ。……迷惑かけちゃうからって」
「……」
やっぱり、その人って。
「それでさ、その人おれたちの手は取らなかったくせに、後ろから蹴っ飛ばしてきた足を取っちゃうんだよ。どう思う? これってもう変態だよねある種の」
「……その彼女のこと、あかねさんは好きだったんですか」
「え?」
「……」
「ううん。そうじゃないよ、ももかチャン」
その人のことは、今も。多分これからも。
ずっと大好きなんだよ。
「……おれもね? その当時は確かに恋愛だったものが、今は“好き”自体いろんな色や形に変わってるよ。今、恐らくおれが彼女に抱いているものは、親愛に近いものだと思う」
「……」
「『夢みたいって言えること。夢みたいって思えること』」
「……あかねさん、それは?」
「おれが、彼女からもらった魔法の呪文だよ」
「……魔法の、呪文?」
君がもし、心からそうこぼした時。
それは、一体どういうことか。考えてみて。
「おれが何を言ったとしても、決めるのは君自身だから。だから、君にはこれだけ伝えておくね」
頑張って、ももかチャン。君ならきっと、大丈夫だよ。



