すべての花へそして君へ③

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 その後、お二人の対決は――


「おうり!」

「……ぎ、ぎもぢわるい……」

「あ、あかねさん! ギブです! 桜李さんギブです!」


 私が無理矢理タオルを投げ込んだことにより、事なきを得たのだった。これでよかったのかは、ちょっとよくわかんないけど。
「着替えてくるから、ちょっと待っててね」と、桜李さんが席を外している間、少しあかねさんと話をすることになった。


「ごめんねえ。いつもおうりの奴が迷惑かけてたんでしょう」

「え? い、いえ。そんなこと……」

「いいんだよ気を遣わなくて。……仲良くしてやってくれて、ありがとうね」

「あ。……それは、あの。私の方……なので」


 何とかそう伝えると、あかねさんはいろいろ察してくれたのか、私の頭をぽんぽんと撫でてくれた。
 あかね――それは、電話の相手の名前。勝手に女性の方だと勘違いしていたけれど、それが男性の方だと知ってちょっと安心した。にしても、ひな子の連絡帳の中身よ。本当、怖いんだけど。


「あいつ、ちょっと難しい奴だからさ。だから、ももかチャンと仲良くなってて嬉しいのもあったし、ちょっと驚いたのもあるんだ」

「……難しい、ですか」

「うん。昔はそんなことなくって、自分の思いを伝えるのに一生懸命な、気遣いしてばっかりの奴だったんだけどさ」


 ……誰に似たんだか。なんか、いろいろ性格ねじ曲がっちゃって。ちょっと面倒くさい奴になっちゃってたんだよね。ほんと、誰に似たのか知らないケド。

 そう言うあかねさんの目は、まるで死んだ魚のよう。一体彼の目には、誰が映っているのだろうか。


「……自分の思いを一生懸命伝えるとか、気遣いしてばっかりとかは、よくわかる気がします」


 だって、いつもあなたは元気で明るくて。その元気を、私に分け与えてくれていたから。いつも、私のことを気にかけて、そして助けてくれたから。


「ただ、少しズルいなって思います。大人だから」

「……どんなときに、ズルいなって思ったか。聞いてもいい?」

「え? ……話を濁された時、でしょうか」

「何の話を濁された?」


 言ってもいいのかな。でも、なんでも知っている仲なら、言っても問題ないか。


「桜李さんが、医者を目指している理由です」

「……」

「他の話題に話をずらされて、結局その時は“また今度”と線を引かれました」

「……」

「けど、多分教えてはくれると思うんです。教えてくれようとはしていたんですきっと」

「……うん。そうだね」


 彼には、桜李さんが続きを話さなかった理由がわかるのだろうか。


「おうりがその時話さなかったのは、それよりも先にすることがあったからかもしれない」

「……すること?」