すべての花へそして君へ③

 ――――――…………
 ――――……


 ……痛い。なんで痛いんだっけ。


「あ、あの……」

「ん? なになに? なんでも聞いてよお。おうりのことなら、もうなんでも知っちゃってるからさあ」


 ……あ。そうだ。かかと落とし、食らったんだっけ。結構もろに。
 なんとか急所を、おれも向こうも外れるようにしたお陰で、目が回っただけで済んだらしい。危ない危ない。


「あかね。変なこと言ったら問答無用で投げ飛ばすからね」


 本当、危ない危ない。目を覚まさなかったら、何を言われていたことか。


「えー? 変なことって、たとえばどんなことかなあ?」

「あかねが今思い当たってることだよ!」

「どれだろお? あれかな? ビービー泣きながらいつもおれの後をついてきてたことかな?」

「そんなことしてない!」

「えー? じゃあ、お化け屋敷に入った時にいー」

「おれお化け屋敷人生で一回も入ったことないもん!」


 あ、ダメだ。この時点で結構なダメージ。
 もうここは、必勝法あるのみ。


「……悪いけどあかね、おれもうこれで上がらせてもらうから」

「ええ!? おうり! それはちょっと困るんだけど」

「最初からおれ言ってたでしょ。今日は昼過ぎで上がるからって」

「それはそうだけど……」


 嘘はついていない。本当に、今日は午後から予定を入れていたんだ。
 なのに……こら。そんな目で桃ちゃんを見るな。


「あの、お邪魔でしたら……」

「邪魔なわけないでしょ」


 助けを求めるあかねの視線に、立ち上がろうとした彼女の腕を掴んで止める。


(……ひなちゃんめ……)


 何が、『近々改めてお礼させてくださいませ』だ。
 何が、『今回ばかりは、させていただかないとあたくしの気が収まりませんわ』だ。
 な・に・が、『すぐお持ちしますから、楽しみにしていてくださいませ』だ!


(……こんなの、卑怯でしょ)


 確かに、初めはクール系な子かなと思った。身長高かったし。でも、彼女のことを見ていたら、たくさん可愛いところが見付かった。フィルターがかかった今じゃ、普通にしてたって可愛いのに。


「……! お、桜李さん?!」

「……ごめん、ちょっとクラッときた」

「え。それって、もしかしてさっきの技のせい……?」

「そうかもしれない……」


 きっと今頃、とある女の子が言っているんだろうなあ。『恋する乙女の力、思い知るがいいですわ!』みたいなこと。


「あの、あかねさんお願いがあります」

「……何かな」

「桜李さん体調が優れないみたいなので、今日はもう上がらせてもらうことはできないでしょうか……」

「……ももかチャン……」


 これが最高傑作。成る程。これは完敗だ。
 だって、正直可愛すぎて今桃ちゃんのこと、まともに見られないも――


「あの。その代わりと言ってはなんですが、私がその分をお手伝いさせてもらおうと思いますので」


 …………ん?