「はあああっ!」
細かい動きの攻撃の最後。顔の前に全体重を乗せた拳を相手にぶつける。
「――っ!」
一瞬驚いたように目を瞠った相手だったが、重心を下げ両手で見事おれの拳を受け止めてみせた。
「でりゃあああ!!!!」
そして飛び上がった相手は、体を回転させながらかかと落としを繰り出してくる。もうおれの勝ちはないが、せめてここで受け止めて、何とか引き分けに持ち越したいところ……!
(取り敢えず、これが終わったらまず一番に桃ちゃんに会いに行く! 桃ちゃんが会いたくなかったとしても、おれは――)
「桜李さん頑張って!」
「……っ、え。桃ちゃん?」
現実か、それとも願望か。
おれを応援する彼女の声と、「ちょ、おうり! ちゃんと受け止め――」という相手の声を聞きながらかかと落としを頭にもろに受けたおれは、しばらくの間目を回していたのだった。
――――――…………
――――……
『……さ、最高傑作ですわ……』
「……どうしたの?」
――そういえば今朝方、ひなちゃんからまた電話が掛かってきたんだ。
『ここまで来ると、自分の才能が恐ろしいですわ……』
「おーい」
『ふふ。ふふふふふふふふふふふ』
「…………」
たまに暴走して、桃ちゃんに関すること以外でもよく電話が掛かってくるので、鼻息が荒くてもあんまり気にはならなかった。
『驚く事なかれ! ですわ!』
「……すごい服でも作ったの?」
『……』
「……ひなちゃん?」
『……桜李君? なんですのこんな朝っぱらから』
「いやいや、掛けてきたのひなちゃんの方」
こんなこともしょっちゅうなので、正直あまり気にはしなかった。というか、一々気にしてたらあの一家じゃやっていけないと思う。それも踏まえて、いつも彼女の兄を尊敬する。
まあそれはさておき。せっかくだから、聞いてみようと思った。
「ひなちゃん、今更なんだけどさ」
『……はい? なんでしょうか』
「本当に、おれでよかったと思ってる?」
『……? はい。勿論ですわ』



