すべての花へそして君へ③


 つんつんと、少し立ち直ったらしい彼女は、自分のスマホを触ってその人を指差す。


「……なわけないでしょ。たまたま電話してるの聞いたのよ」


“おれのこと待ってるみたいだから。……ん? うん、また今度の日曜日ね。それじゃ”


「……そうでしたか」


 そう言うと、「でしたら恐らく……」と、彼女はやけに納得したように頷く。


「……私も聞きたいんだけど」

「……? はい、なんですの?」

「ひな子は、なんで桜李さんのこと知ってたの……?」

「……話しておりませんでしたわね。彼は、……まあ兄のような存在ですわ。腹黒ですけれど」


 だから、あんたと桜李さんの間にどんなバチバチがあったのよ。


「いいですこと桃香。明日は戦ですわよ」

「え」

「今夜はしっかり休んで、明日は朝4時から準備に取り掛かりますわ」

「えっ! よ、4時!?」


 それは、何がなんでも早すぎるのでは……?


「何を言っていますの! 遅すぎるくらいですわ!」

「そ、そんな朝っぱらから一体何するの……?」

「桃香は、何も心配することはありませんわ。寧ろ、体だけ貸していただければ、あとは寝ていても問題ありませんわね」

「……え。な、何する気……」

「全てあたくしにお任せくださいな! そうと決まれば、さあ。寝ますわよ桃香」

「わ、私さっき起きたばかりで……」

「今すぐ寝ないと、……あたくしが無理矢理にでも眠らせますわよ」

「ひっ……!」


 こんなにも目が冴えているというのに、私は今すぐ眠りにつけるだろうか。そして目が覚めた時。私はちゃんと生きているだろうか……。


「いいからお眠りなさい桃香。あたくしに、手を汚させないでくださいませ」

「……はい」


 私が今できることは、きっと、この目が血走りまくっている友人のことを、ただただ信じるだけだと。……目をつぶりながら、悟ったのだった。