つんつんと、少し立ち直ったらしい彼女は、自分のスマホを触ってその人を指差す。
「……なわけないでしょ。たまたま電話してるの聞いたのよ」
“おれのこと待ってるみたいだから。……ん? うん、また今度の日曜日ね。それじゃ”
「……そうでしたか」
そう言うと、「でしたら恐らく……」と、彼女はやけに納得したように頷く。
「……私も聞きたいんだけど」
「……? はい、なんですの?」
「ひな子は、なんで桜李さんのこと知ってたの……?」
「……話しておりませんでしたわね。彼は、……まあ兄のような存在ですわ。腹黒ですけれど」
だから、あんたと桜李さんの間にどんなバチバチがあったのよ。
「いいですこと桃香。明日は戦ですわよ」
「え」
「今夜はしっかり休んで、明日は朝4時から準備に取り掛かりますわ」
「えっ! よ、4時!?」
それは、何がなんでも早すぎるのでは……?
「何を言っていますの! 遅すぎるくらいですわ!」
「そ、そんな朝っぱらから一体何するの……?」
「桃香は、何も心配することはありませんわ。寧ろ、体だけ貸していただければ、あとは寝ていても問題ありませんわね」
「……え。な、何する気……」
「全てあたくしにお任せくださいな! そうと決まれば、さあ。寝ますわよ桃香」
「わ、私さっき起きたばかりで……」
「今すぐ寝ないと、……あたくしが無理矢理にでも眠らせますわよ」
「ひっ……!」
こんなにも目が冴えているというのに、私は今すぐ眠りにつけるだろうか。そして目が覚めた時。私はちゃんと生きているだろうか……。
「いいからお眠りなさい桃香。あたくしに、手を汚させないでくださいませ」
「……はい」
私が今できることは、きっと、この目が血走りまくっている友人のことを、ただただ信じるだけだと。……目をつぶりながら、悟ったのだった。



