すべての花へそして君へ③


「……仕方ありませんわね」


 私の思いが通じたのか。最後にそう呟いた友人の眉毛は、すっかり下がりきっていた。


「明日は、なんでもご友人と会う約束があるとかで。大学の方に桜李君は顔を出さないそうですわ」

「……え? どういうこと? ていうか誰情報?」

「桜李君はあんな感じですから、あなたとは違いご友人も多いんですの」

「……嫌みか」

「ですから……まあ、ここから虱潰しに探すと致しましょうか」

「……ひな子……」


 そう言ってスマホ画面から連絡先を引っ張り出してくるけれど。【桜李君のご友人リスト】? あんた、なんでそんなもん入れてんのよ。知ってんのよ。


「……何変な顔なさってますの。世の中情報社会ですのよ? 足使って見つけ出すなんて時代遅れですわ」

「悪かったわね……!」


 けど、この中から虱潰しっていうなら、結局は足に頼らないといけないんじゃないか。……なんで私だけこんなにダメージが大きいのよ。


「……あれ、この人……」

「……? お知り合いがいらっしゃいましたの?」

「……」

「桃香? どうなさいましたの?」

「……いや、ごめん。なんでもない見間違い」

「……」

「……」

「……罪悪感」

「……!」

「何かわかったのなら行動に移すべきですわ」

「……でも」

「桃香、いいですこと」


 確かに、彼の交友関係を勝手に漁ることは、よくないことかもしれません。けれど、本当にこのままで宜しいんですの?


「時間が解決してくれることもきっとあるでしょう。あなたの心の中のように」

「……」

「けれど、反対に言いにくくなってしまうこともありますわ。それは、あなた自身もわかっているのではなくて」

「……うん」


 きっと、そうかもしれない。
 本当は、今すぐ会って言いたいことをちゃんと伝えたい。でももしかしたら、そうやって“よくないこと”って決めつけて、結局は逃げてるだけなのかも。


「らしくありませんわ!」

「え……」

「あなたという人が! 高があの腹黒男一人に何をビビっておりますの!」

「ちょ、ひな子……!」

「ちゃっと行って、ちゃっと帰ってきなさいな」

「……ちゃ、ちゃっと……」

「そして、……今度は笑って抱きしめさせてくださいまし」

「……ひな子……」