すべての花へそして君へ③


「……こほん。それで? 改めて聞きますが桃香、あなたはこれからどうするおつもりですの」

「……取り敢えず、直接会って話そうと思う」


 いっぱい寝て、いっぱい食べて、いっぱい泣いて。私の頭の中でも、いろいろ整理できたと思う。どうして彼が怒ったのかも、ちゃんと。

 けれど、今の私がわかるのは、彼が百合ヶ丘大学の四年生であることくらい。実習生の資料は残っているから、両親に頼めばきっと、彼の住所も連絡先もわかるだろうけれど。でも、そんな大事な資料を、疚しい気持ちで見させてもらうなんてこと、しちゃダメだ。

 結論、今からしたいことは決まったけれど、彼の所在がわからないというのが現状。イコール、さっぱりどうすればいいのかわからない。正直詰んでいた。


「クソが付くほどのバカ真面目ですわ。いっそここまで来ると腹立たしいとさえ思いますわ」


 スマホを突き出してくる友人の目は、完全に据わっていた。


「……ひ、ひな子さん?」

「何を言ってらっしゃいますの桃香。恋する乙女は決して止まってはいけませんの。使えるものは、じゃんじゃん利用なさいな」

「で、できるわけないでしょ!」

「何故ですの。バカ真面目だからですの?」

「そ、……そんなこと勝手にされたら、桜李さんがなんて思うか」

「……」

「嫌な子だなとは、思われたくない。もう」

「……強情ですわ」

「だって、父さんたちから聞いたって、ひな子から聞いたって、結局はおんなじことでしょ?」

「同じなわけないじゃありませんか。『大親友から聞きまして~』……って、十分な言い訳じゃないですの」

「い、言い訳って何!?」

「いいから受け取りなさいな桃香」


 スマホを顔に押しつけてこられる。正直、喉から手が出るほど欲しい。桜李さんは、こんなことしたって嫌な子だなんて思わないって、わかってるけど。


「……ううん。やっぱり私、大学行ってくる」

「桃香……」

「直接会いに行って、それで、直接話をしたいの」

「……」


 電話だけじゃ、きっと伝えられない。相手の表情を見ないと、全部伝えきれない。
 尻窄みになりながらも何とかそう伝えると、友人は一度ゆっくりと目蓋を下ろし。そして盛大にため息を吐いた。……言いたいことがあるならはっきり言ってよ。


「(あの腹黒男が、そんなこと思うはずありませんのに。純粋すぎるにもほどがありましたかしら……)」


 ちょっと。かわいそうな子を見るような目で見ないでよ。何度もため息吐かないでっ。