「……こほん。それで? 改めて聞きますが桃香、あなたはこれからどうするおつもりですの」
「……取り敢えず、直接会って話そうと思う」
いっぱい寝て、いっぱい食べて、いっぱい泣いて。私の頭の中でも、いろいろ整理できたと思う。どうして彼が怒ったのかも、ちゃんと。
けれど、今の私がわかるのは、彼が百合ヶ丘大学の四年生であることくらい。実習生の資料は残っているから、両親に頼めばきっと、彼の住所も連絡先もわかるだろうけれど。でも、そんな大事な資料を、疚しい気持ちで見させてもらうなんてこと、しちゃダメだ。
結論、今からしたいことは決まったけれど、彼の所在がわからないというのが現状。イコール、さっぱりどうすればいいのかわからない。正直詰んでいた。
「クソが付くほどのバカ真面目ですわ。いっそここまで来ると腹立たしいとさえ思いますわ」
スマホを突き出してくる友人の目は、完全に据わっていた。
「……ひ、ひな子さん?」
「何を言ってらっしゃいますの桃香。恋する乙女は決して止まってはいけませんの。使えるものは、じゃんじゃん利用なさいな」
「で、できるわけないでしょ!」
「何故ですの。バカ真面目だからですの?」
「そ、……そんなこと勝手にされたら、桜李さんがなんて思うか」
「……」
「嫌な子だなとは、思われたくない。もう」
「……強情ですわ」
「だって、父さんたちから聞いたって、ひな子から聞いたって、結局はおんなじことでしょ?」
「同じなわけないじゃありませんか。『大親友から聞きまして~』……って、十分な言い訳じゃないですの」
「い、言い訳って何!?」
「いいから受け取りなさいな桃香」
スマホを顔に押しつけてこられる。正直、喉から手が出るほど欲しい。桜李さんは、こんなことしたって嫌な子だなんて思わないって、わかってるけど。
「……ううん。やっぱり私、大学行ってくる」
「桃香……」
「直接会いに行って、それで、直接話をしたいの」
「……」
電話だけじゃ、きっと伝えられない。相手の表情を見ないと、全部伝えきれない。
尻窄みになりながらも何とかそう伝えると、友人は一度ゆっくりと目蓋を下ろし。そして盛大にため息を吐いた。……言いたいことがあるならはっきり言ってよ。
「(あの腹黒男が、そんなこと思うはずありませんのに。純粋すぎるにもほどがありましたかしら……)」
ちょっと。かわいそうな子を見るような目で見ないでよ。何度もため息吐かないでっ。



