すべての花へそして君へ③


「はい」


 友人が手渡してきたのは、便箋に入った一通の手紙。何これ? と視線で聞くと、いいから開けてみなさいと、同じく友人は視線で私を促す。
 訝しがりながら封を開けると、その中に入っていたのは、一枚の写真。私の家族と実習生の彼らが、楽しそうな笑顔で映っていた。


「どなたかが、サプライズ計画を洩らしてしまったようですわ」

「……ひな子……」


 ……どうやら友人は、私が寝ている間に直接家へ行ったらしい。


「そして、……誰かさんが、そのサプライズを決行なさったそうですわ。お料理から、お部屋の飾り付けまで」

「……え……?」

「ご弟妹は、それは楽しそうにしていらっしゃったそうですわ。勿論ご両親も。実習生の方々も」

「……そっか」


 そこには、一人一人、私へのメッセージが書かれている。何故か弟たちのも。恐らく、書きたくなって無理に書かせてもらったんだろうけれど。


【早く元気になってね! また会いに来るね!】

 変な心配をかけないよう、両親が実習生には風邪をこじらせたとでも言ったのだろう。


【実習中はいつも助けてくれてありがとう! お世話になりました】

 そうしなきゃと、思ってお世話をしていた覚えはないけれど。でも、少しでも役に立てていたなら、……よかった。


「……」

「……桃香?」

「……ねえ、ひな子」

「なんでしょう?」

「昨日の私の荷物の中に、最近できたパティスリーの紙袋……なんて、入ってなかったわよね……?」

「……流石に、そこまで確認はしていませんけれど……」


【ごちそうさまでした!】

『――ねえね思い出したよ! ぷりん! ぷりんだよ!』
『それは、私と一緒だったから覚えてるんだって。それ以外を思い出してって言ってるの』


「……もし気になるようでしたら、確認して参りますわ」

「ううん。やっぱいい。大丈夫」

「そうですか? ……あら、桃香?」

「な、なに」


「少し顔が赤いようです。熱でしょうか……」と、友人は私の額に手を当ててくるけれど、悩ましげに首を傾げただけだった。
 首を捻る友人の視線から逃げるように、私は慌てて食事に箸を付けることにした。


「……それで? これからどうするおつもりですの」


 すっかりお腹が満たされたところで、空気を読んで席を外してくれていたひな子が帰ってくる。どうやらお風呂に入っていたようだ。……ゴスロリって、こんなものすごいネグリジェまで作るのね。


「……どうかなさいました?」

「いや、好きなんだなーっと思って」

「如何にも! この方があたくしの魅力が存分に発揮されますの!」

「うん。よく似合ってる」

「……!!!!」

「でも、そんな服どこで売ってるの。まさか自作?」

「いいえ。ちゃんとしたブランドものです」

「へー。そうなんだ」

「今度桃香にも着させて差し上げますわ!」


 それについては、丁重にお断りを入れさせてもらおうと思う。