「はい」
友人が手渡してきたのは、便箋に入った一通の手紙。何これ? と視線で聞くと、いいから開けてみなさいと、同じく友人は視線で私を促す。
訝しがりながら封を開けると、その中に入っていたのは、一枚の写真。私の家族と実習生の彼らが、楽しそうな笑顔で映っていた。
「どなたかが、サプライズ計画を洩らしてしまったようですわ」
「……ひな子……」
……どうやら友人は、私が寝ている間に直接家へ行ったらしい。
「そして、……誰かさんが、そのサプライズを決行なさったそうですわ。お料理から、お部屋の飾り付けまで」
「……え……?」
「ご弟妹は、それは楽しそうにしていらっしゃったそうですわ。勿論ご両親も。実習生の方々も」
「……そっか」
そこには、一人一人、私へのメッセージが書かれている。何故か弟たちのも。恐らく、書きたくなって無理に書かせてもらったんだろうけれど。
【早く元気になってね! また会いに来るね!】
変な心配をかけないよう、両親が実習生には風邪をこじらせたとでも言ったのだろう。
【実習中はいつも助けてくれてありがとう! お世話になりました】
そうしなきゃと、思ってお世話をしていた覚えはないけれど。でも、少しでも役に立てていたなら、……よかった。
「……」
「……桃香?」
「……ねえ、ひな子」
「なんでしょう?」
「昨日の私の荷物の中に、最近できたパティスリーの紙袋……なんて、入ってなかったわよね……?」
「……流石に、そこまで確認はしていませんけれど……」
【ごちそうさまでした!】
『――ねえね思い出したよ! ぷりん! ぷりんだよ!』
『それは、私と一緒だったから覚えてるんだって。それ以外を思い出してって言ってるの』
「……もし気になるようでしたら、確認して参りますわ」
「ううん。やっぱいい。大丈夫」
「そうですか? ……あら、桃香?」
「な、なに」
「少し顔が赤いようです。熱でしょうか……」と、友人は私の額に手を当ててくるけれど、悩ましげに首を傾げただけだった。
首を捻る友人の視線から逃げるように、私は慌てて食事に箸を付けることにした。
「……それで? これからどうするおつもりですの」
すっかりお腹が満たされたところで、空気を読んで席を外してくれていたひな子が帰ってくる。どうやらお風呂に入っていたようだ。……ゴスロリって、こんなものすごいネグリジェまで作るのね。
「……どうかなさいました?」
「いや、好きなんだなーっと思って」
「如何にも! この方があたくしの魅力が存分に発揮されますの!」
「うん。よく似合ってる」
「……!!!!」
「でも、そんな服どこで売ってるの。まさか自作?」
「いいえ。ちゃんとしたブランドものです」
「へー。そうなんだ」
「今度桃香にも着させて差し上げますわ!」
それについては、丁重にお断りを入れさせてもらおうと思う。



