『幼少期は、誰かの腰巾着でしかありませんでしたわ。けれど、それではダメだとわかったんです』
『人を傷付けることは、誰も褒めてはくれない。……私は、桃香さんを見ていて、変わろうと。変わらなければと思いました』
『なかなかお話しする機会もなくて。今回を逃してしまえば、今度いつあるかはわからない。……それでつい、昔のことを』
『いえ。心配をしていたのは本当です。……けれど、余計なことも思ってしまいました』
『……もしよければ、私とお友達になってくれないか、って――……』
――――――…………
――――……
何か、すごくいい夢を見た気がする。おかしいな。初めは、とても怖い思いをしていたはずなのに。
それが何故かはわからないけれど、その心地好い時に、いつまでも浸っていたかったのかもしれない。
「う、……嘘でしょ……?」
目が覚めたのは、翌日の8時。朝ではない。……夜の、だ。今までの人生において、これほど自分の睡眠不足を呪ったことはないわ。最低。
そのお陰で、友人と立てたサプライズ計画は完璧台無しとなった。けど、いいんだ別に。家に帰っていたところで、どっちみち楽しい打ち上げパーティーなんて、できそうになかったし。
コンコンと、部屋の扉がノックされる。そこから現れたのは、食事を運んできてくれた友人。
「何か食べられそうですか?」
「うん。……流石にペコペコ」
家への連絡は、友人が済ませてくれたようだ。本当感謝してもしたりないけど、流石に世話になりすぎてる。そろそろ家に戻らないと。
「帰ったところで、桜李君はもういませんわよ」
「……そういうつもりじゃ。だって、あんまり居すぎても親にも心配かけるし、ひな子のご家族にも迷惑かけるし……」
「お家の方には、もう一泊するとご連絡を入れましたわ。あたくしがまだ、一緒にいたいと無理を言いました、と」
「……ひな子……」
「ですので。……桃香、今夜も女子会ですわ! 楽しみですわね!」
「……ひな子ったら」
……けど、そっか。終わっちゃったんだ。
まだ、何もできてないのに。お礼だって。きちんと、……謝ってすらいないのに。



