すべての花へそして君へ③


『……魘されてますわ。ごめんなさいと、怒らないでと、嫌わないでと。……頼んだあたくしが言うのも可笑しい話ですが、このままでいいんですの?』


 夜中は、誰かの涙がずっと降り続いていた。


『あなたがしたかったのは、本当にこんなことですの。過去のトラウマを、上書きすること? それでは、……何の解決にもなっていませんわ』

「……そうだねえ」

『そうだね、……なんて』

「大丈夫。流石に、このままじゃダメだって思ってるから」

『元はといえば、あなたの腹黒が原因じゃありませんの。純粋な少女を弄んで。それはさぞ楽しかったことでしょうね』

「うん」

『うんって……。今夜は珍しくバカ正直ですのね』

「だってね、本当に楽しかったんだー。桃ちゃんと一緒にいるの」

『……桜李君』

「……大丈夫。何とかするから」

『……』

「ひなちゃんには負けるかもしれないけど、……おれも、桃ちゃんのこと大事に思ってるから」

『……それは、桃香と同じ意味でですの』

「……」

『桜李君』

「……さあ?」

『さあって……』

「なんで、ひなちゃんに教えないといけないの?」

『この期に及んで、そんなことを仰いますの』

「だっておれもよくわかんないし」

『……はい? 今何と仰いましたか?』

「……ま、これから次第ってところかな」

『……ちょ、ちょっと、桜李君?』

「っと。そろそろみんな起きてくるから、そろそろ切るね」

『お、お待ちになって。まだその答えを聞け――』

「……ぶつん、っと」


 けれど、今はもう上がっていた。まるで、どこかの誰かの中で、決心がついたかのように。晴れやかだ。


「……さて。今日で実習も最終日! 頑張るぞおー! おおー!」