『……魘されてますわ。ごめんなさいと、怒らないでと、嫌わないでと。……頼んだあたくしが言うのも可笑しい話ですが、このままでいいんですの?』
夜中は、誰かの涙がずっと降り続いていた。
『あなたがしたかったのは、本当にこんなことですの。過去のトラウマを、上書きすること? それでは、……何の解決にもなっていませんわ』
「……そうだねえ」
『そうだね、……なんて』
「大丈夫。流石に、このままじゃダメだって思ってるから」
『元はといえば、あなたの腹黒が原因じゃありませんの。純粋な少女を弄んで。それはさぞ楽しかったことでしょうね』
「うん」
『うんって……。今夜は珍しくバカ正直ですのね』
「だってね、本当に楽しかったんだー。桃ちゃんと一緒にいるの」
『……桜李君』
「……大丈夫。何とかするから」
『……』
「ひなちゃんには負けるかもしれないけど、……おれも、桃ちゃんのこと大事に思ってるから」
『……それは、桃香と同じ意味でですの』
「……」
『桜李君』
「……さあ?」
『さあって……』
「なんで、ひなちゃんに教えないといけないの?」
『この期に及んで、そんなことを仰いますの』
「だっておれもよくわかんないし」
『……はい? 今何と仰いましたか?』
「……ま、これから次第ってところかな」
『……ちょ、ちょっと、桜李君?』
「っと。そろそろみんな起きてくるから、そろそろ切るね」
『お、お待ちになって。まだその答えを聞け――』
「……ぶつん、っと」
けれど、今はもう上がっていた。まるで、どこかの誰かの中で、決心がついたかのように。晴れやかだ。
「……さて。今日で実習も最終日! 頑張るぞおー! おおー!」



