……彼女の言っている意味が、よくわからなかった。
あれかな。彼女の趣味で、この部屋がゴシックロリータ一色に染まっているからかな。上手く頭が働かないようになる作用でもあるのかもしれない。
「桃香」
「ちょ、ちょっと待って」
「……待っても結果は変わりませんわ」
「……じゃあ何? ひな子が、本当に私を泣かせて、苦しめたっていうの」
「……結果的に、そうなってしまったのは事実です」
「……理由は?」
「え?」
「理由があるんでしょう? ひな子が、理由もなしに人のこと傷付けるなんてこと、しないもん」
「……桃香の敵とあらば、理由もなしに容易に傷付けて差し上げますけれど」
「ひな子」
「……何か、変わるきっかけになればと、そう思いました」
「……変わる?」
「はい。……過去に囚われているあなたの」
「――」
「……桃香。怖いこと、嫌なことを我慢し続けても、その先には何もありませんのよ」
誘拐された時、怖くて仕方がなかった。たくさん泣いて、たくさん喚いて、たくさん叫んで。どれだけ、怒鳴られ、殴られ、封じられたかわからない。
どうやったって、何をしたって、勝てっこない。ただ耐えて、耐えて耐えて耐えて。耐えて、助けを待つしかなかった。
「ご両親に引け目を感じることはありませんの。攫われたくて攫われたわけではない。ご両親が百合ヶ丘の病院を出ることになったのは、決して桃香のせいじゃないですわ」
自分で勝手に責任を感じることで、家の中に居場所を作っていた。極力いい子でいようとした。親に迷惑をかけないよう、努めた。勉強も、運動も、家事も。熟せるよう頑張った。
自分が、許せなくて。親を泣かせた自分が、憎くて。
「……桃香」
「……」
「ごめんなさい桃香」
「……」
「……彼。桜李君は、そのことを全部知っていますの」
「……え?」
「ごめんなさい、桃香」
「……ひな、こ。一体どういう……」
「ごめんなさい。……ごめんなさい」
「……」
ぽろぽろと。彼女がこぼしていく涙を見ていると、私も胸が痛くなった。彼女の私への思いが真っ直ぐ届いてくるからだろう。
「……あたくしが、桜李君にお願いしましたの……」
桃香をどうか、助けてあげてくださいましと。



