「……ええ。把握致しましたわ。……いいえ。あなたの責任ではありませんの。今回の件は全て――」
誰かの話し声に、寝ぼけている頭が徐々に覚醒していく。
「……はい。はい承知致しました。そちらの方もお任せください。あとはこちらで何とか――」
ゆっくりと体を起こすと、どうやら大きなベッドの上に寝かされていたらしい。ものすごい寝心地いいと思ったら。というか、何故ネグリジェまで着ているの私。
「……お気持ちはわかりますが、少し待ってあげててくださいな。整理する時間、処理する時間、受け入れる時間が、たっぷり必要です。……どうか、お願い致します」
「……ひな子? どこ?」
「……! 起きたみたいですわ。……ええ。またご連絡します」
扉という扉を開けてみるけれど、声ばかりが聞こえるだけで彼女の姿は一向に見付からない。半ば諦めていたところで、ベッドルームに戻ると彼女がどこか心配そうな顔で私を待っていた。
「……もう起きて大丈夫ですの桃香」
「うん。……ちょっと、頭ぼうっとするけど」
「あれだけ泣けば、それはぼうっとしますわ」
「え。泣いたの私……」
「ええ。それはそれは。一張羅に鼻水も付けられました」
「……ご、ごめん……」
そっか、泣いたのか。だから私、ちょっと落ち着いてる。スッキリしてるんだ。
「……お話、お伺いしても?」
「……長くなってもいい?」
「勿論。……そうですわ。紅茶とお茶菓子を用意しましょう。……きっと、楽しい夜になりますわ」
「……ありがとう、ひな子」
そして私は、今までのことを全て彼女に話すことにした。
彼に初めて会った時から、今まであったこと。そして、私の想いの変化を。すべて。
「――最低ですわね、あの腹黒男」
「え? ちょ、ひな子? 私の話聞いてた?」
やけ食いのようにむしゃむしゃ焼き菓子を食べるひな子が、ちょっと怖い。
「桃香の気持ちを弄んで……許せませんわ」
あ、あれ~? 私、そんな話してたっけ……。
「ひ、ひな子? ちょっと落ち着いて」
「あたくしは至って平静ですわ」
(いやいや、どこがですか……)
「そして、……桃香。あなたに謝らなければならないことがあるんですの」
「……謝らないといけないこと? ひな子が?」
「ええ。……」
「……ひな子?」
「……あなたのことを泣かせて、苦しめてしまった原因が、……あたくしにあるからですわ」



