すべての花へそして君へ③


「……ええ。把握致しましたわ。……いいえ。あなたの責任ではありませんの。今回の件は全て――」


 誰かの話し声に、寝ぼけている頭が徐々に覚醒していく。


「……はい。はい承知致しました。そちらの方もお任せください。あとはこちらで何とか――」


 ゆっくりと体を起こすと、どうやら大きなベッドの上に寝かされていたらしい。ものすごい寝心地いいと思ったら。というか、何故ネグリジェまで着ているの私。


「……お気持ちはわかりますが、少し待ってあげててくださいな。整理する時間、処理する時間、受け入れる時間が、たっぷり必要です。……どうか、お願い致します」

「……ひな子? どこ?」

「……! 起きたみたいですわ。……ええ。またご連絡します」


 扉という扉を開けてみるけれど、声ばかりが聞こえるだけで彼女の姿は一向に見付からない。半ば諦めていたところで、ベッドルームに戻ると彼女がどこか心配そうな顔で私を待っていた。


「……もう起きて大丈夫ですの桃香」

「うん。……ちょっと、頭ぼうっとするけど」

「あれだけ泣けば、それはぼうっとしますわ」

「え。泣いたの私……」

「ええ。それはそれは。一張羅に鼻水も付けられました」

「……ご、ごめん……」


 そっか、泣いたのか。だから私、ちょっと落ち着いてる。スッキリしてるんだ。


「……お話、お伺いしても?」

「……長くなってもいい?」

「勿論。……そうですわ。紅茶とお茶菓子を用意しましょう。……きっと、楽しい夜になりますわ」

「……ありがとう、ひな子」


 そして私は、今までのことを全て彼女に話すことにした。
 彼に初めて会った時から、今まであったこと。そして、私の想いの変化を。すべて。


「――最低ですわね、あの腹黒男」

「え? ちょ、ひな子? 私の話聞いてた?」


 やけ食いのようにむしゃむしゃ焼き菓子を食べるひな子が、ちょっと怖い。


「桃香の気持ちを弄んで……許せませんわ」


 あ、あれ~? 私、そんな話してたっけ……。


「ひ、ひな子? ちょっと落ち着いて」

「あたくしは至って平静ですわ」

(いやいや、どこがですか……)

「そして、……桃香。あなたに謝らなければならないことがあるんですの」

「……謝らないといけないこと? ひな子が?」

「ええ。……」

「……ひな子?」

「……あなたのことを泣かせて、苦しめてしまった原因が、……あたくしにあるからですわ」