「……桃香さん?」
「……めて」
「え?」
「やめてよ! もう!」
彼女の腕をぎりぎりと掴み、睨み付ける。
「いっ、……も、桃香さん?」
「もう満足でしょう?」
「えっ?」
「私のことが嫌いなら、嫌いってはっきり言えばいいじゃない。桜李さんのことが気になってるなら、直接言えばいいじゃない」
「え! わ、私、そんなつもりは……」
「そんなつもりはない? ……ただ心配してただけなら、何故わざわざ過去の話を引っ張り出してきたの。必要ないじゃない」
「そ、れは……」
「帰って」
「桃香さん……」
「これ以上何か言われたら私、あなたに何するかわかんない」
「……」
「お願い。……おねがい」
頭が痛い。嫌だもう。何も考えたくない。
彼女に振り回されるのも、もう懲り懲りだ。苛々させないで。モヤモヤ、させないで。
これ以上この人の前で、格好悪い姿晒させないで――。
「……いいえ。桃香さん、私は絶対引きません」
「……そんなに嫌がらせしたいの」
「違います。……不躾で申し訳ございません桜李様。桜李様はおいくつでいらっしゃいますか」
「……っ、は? 今そんな話を」
「21だね」
「……成人なさっていらっしゃいますが、まだ学生の身。……失礼を承知で言わせていただきますが、見た目だけでは私たちとそう大差ありませんわ。寧ろ幼いとさえ感じます」
「……そうだねえ」
「もし何かあった時、桃香さんを守っていただけるか。……誓われたとしても信用なりません」
「……ふざけないで」
「一般論を言ったまでです。……疑うのであれば、お店の方や他のお客様にお伺いしても――」
気が付いたら、彼女の襟元を掴んでいた。もう片方の手は、高く振り上げていた。
それでも、彼女は微塵も怖がらず。真っ直ぐ私を見つめてきていて。それがまた癪に障って。
……もう、限界だった。
「桃ちゃん」
「……離して」
「だめ」
「離して!」
「……」
掴まれた腕は、どうやってもびくともしなくて。……私は、ゆっくりと腕を下ろした。
「ごめんね。桃ちゃんちょっと気が動転してるみたい。今日のところは引いてくれる?」
「……けれど……」
「実は迎え呼んであるんだ。おれも傘持ってなかったし」
「……」
「……大丈夫。心配してくれてありがとね」



