思わず自分が口走った内容に、……思わず彼と同様首を傾げた。
「……桃ちゃんの、こと?」
静かに離れていった指先は、そのまま彼の顎先を撫でる。
「あの、そういう意味ではなくて」
「そういう意味って?」
「そ、……その。恥ずかしいんですが」
「ん?」
「……あまり、友人と呼べる人たちが多くはなくて……」
「…………」
目ん玉落っこちそうなくらい、ものすごい驚いてるけれど……。仕方ない。こうなりゃもう、違う墓穴を掘るっきゃない。
「……その、小さな病院の娘ということもあって、通っている学校じゃ少しばかり肩身が狭く感じることがあって……」
「……そうなの?」
「両親には心配かけたくないので、言ってはいません。勉強は好きですし、寧ろそれだけ考えればいい学校だと思うんです」
「ふむふむ……」
「けれど……その、学校が学校なだけに、生徒たちも生徒たちで」
「うんうん」
「……あまりこう、向いてないんです。牽制だとか探り合いだとか。性格上、そっち方面は……」
「……」
けれど、唯一と言っていいほどの友人は、寧ろそれが大好物と言っても過言ではないくらい、人の動向を窺うことを楽しんでいる。……見た目のオンオフの切り替えが激しいのもそのせいだろう。
「自分の中だけなら未だしも、相手に嘘を言うのはどうかと思って」
「うんっ。そんなところも可愛いよね~」
「……え。可愛い?」
「うん。可愛い」
……こっちの墓穴に関しては、結構マジな相談なのに。
ダメだ。相談する相手間違えた。
「……うさぎ」
「……え?」
「ウサギさんみたいだなあって、思ったよ?」
「……はい?」
いろいろ突っ込みどころは満載だけど……。
取りあえず、170cm近くある巨体と、よくもまあそんな可愛らしいものを一緒に並べやがったなと言ってやりたい。やっぱりラブリー宇宙人だこの人。
「それとね? おれの知ってる人に、ちょっと似てるかも」
「……お知り合いに、ですか?」
「うんっ。いつも元気で明るくてね? すっごく賢くて、お料理も上手なの!」
「……ありがとう、ございます?」
「それから、頑固で、我慢強くて、……ちょっぴり寂しがり屋さん」
「……」
「でも本当はあんまり我慢強くなくてね? 周りの人のために無理するの」
「……」
……知らないところで、いっぱい泣いてたんだろうなあ。
彼は、その知り合いを思い出してか、もう一度月夜を見上げる。少しだけ、胸の奥が気持ち悪い。この、今にも泣き出しそうな横顔を、私は知らないからだ。
「おれだけじゃなくてね。いろんな人がその人に手を伸ばしたんだ。我慢しないでって。おれたちが何とかするよって。……言ってもさ、その子は結局誰の手も取らなかったんだ。嫌だったんだって。迷惑かけるのが」
ね? ものすごーく頑固でしょ?
そう言って一度こちらを向く気配がしたけれど、今はもう、まともに顔を見られる気がしなっ――
「でもね、もう限界ってなった時にその人が掴んだのは、多分後ろから蹴っ飛ばされた足だったんだよねー」
……え?
正直、彼に手を伸ばしてもらえただけでも羨ましいのに、よりにもよって、何故その選択肢?
てかなんで後ろから蹴っ飛ばされたの……!?



