すべての花へそして君へ③


「はっは~ん成る程ですわ。わかってしまいましたわ!」

「え。……な、何が……?」

「それでコロッといってしまったわけですわね!」

「あのね、縁起でもないこと言わないでくれる」

「……縁起でもないとは?」

「仮にも私医者の子ども」

「ああそうでしたわね。ですから頭がお堅いのでしたわ」

「……ちょっと」


 病院が休みの日は、私にとってもお休みの日。今日は食事に洗濯、掃除に子守は全て両親に任せているので、どこか開放的な気分。勿論それが嫌だというわけではないけれど。


「その実習生の方。……流石にもう気になっているんじゃありませんの」

「……そりゃ、ラブリー宇宙人が気にならない人なんかいないと思うんだけど」

「違いますわ。率直に言わせていただくと、好いていらっしゃるのではということです」

「……好き?」


 今日は塾も午前中で終わり、お昼から友人とカフェで駄弁っている。いつ来ても、ここのフレンチトーストはふわっふわでとろっとろで、とっても甘くてとっても美味しくて、……好き。


「好き……とは少し、違うと思う」


 そりゃ、確かに髪の毛ふわっふわで気持ちよさそうだし、童顔で可愛くて、甘い顔立ちしているけれども。


「ちゃんと、大人なんだなって。……私よりもずっと」


 よく見ているんだなと。全然、そんな素振りなんかなかったのに。見せなかったのに。


「……その方も、大変だったのですわね」

「……うん。そうだと思う」


 一瞬覗き見た横顔は、私の知らない大人な顔で。その後ずっと、妙に心臓がざわざわとした。
 そして、大人であると同時にズルイ人。


『それじゃ、おやすみ桃ちゃん』

『……あ、あの』

『ん?』

『どうして、……はぐらかすんですか』

『……』

『私まだ、聞いてません。聞けてません』


“――おれが医者を目指している理由はね、おれみたいな子を一人でも救ってあげたいと思ったからなんだ”

 彼は、それだけ言って柴犬のモモちゃんに話を逸らした。『聞いて欲しくなかったらわざわざ連れてきてない』って、言ってもくれたのに。


『そんなにおれとの時間楽しかったんだあ』

『……え?』

『それともお、みんなには内緒の“秘密の時間”にドキドキしたのかな?』

『……っ!』


 そうやって話を逸らして。私の反応を見て楽しんで。
 それでも騙されまいとする私に、まるで、我が儘を言う子どもに言い聞かせるみたいに。


『今夜はもう遅いから、また今度』


 そんな風に言われたら、それ以上何も言えないこと知ってるから、そうやっておちょくってくるんだ。