「はっは~ん成る程ですわ。わかってしまいましたわ!」
「え。……な、何が……?」
「それでコロッといってしまったわけですわね!」
「あのね、縁起でもないこと言わないでくれる」
「……縁起でもないとは?」
「仮にも私医者の子ども」
「ああそうでしたわね。ですから頭がお堅いのでしたわ」
「……ちょっと」
病院が休みの日は、私にとってもお休みの日。今日は食事に洗濯、掃除に子守は全て両親に任せているので、どこか開放的な気分。勿論それが嫌だというわけではないけれど。
「その実習生の方。……流石にもう気になっているんじゃありませんの」
「……そりゃ、ラブリー宇宙人が気にならない人なんかいないと思うんだけど」
「違いますわ。率直に言わせていただくと、好いていらっしゃるのではということです」
「……好き?」
今日は塾も午前中で終わり、お昼から友人とカフェで駄弁っている。いつ来ても、ここのフレンチトーストはふわっふわでとろっとろで、とっても甘くてとっても美味しくて、……好き。
「好き……とは少し、違うと思う」
そりゃ、確かに髪の毛ふわっふわで気持ちよさそうだし、童顔で可愛くて、甘い顔立ちしているけれども。
「ちゃんと、大人なんだなって。……私よりもずっと」
よく見ているんだなと。全然、そんな素振りなんかなかったのに。見せなかったのに。
「……その方も、大変だったのですわね」
「……うん。そうだと思う」
一瞬覗き見た横顔は、私の知らない大人な顔で。その後ずっと、妙に心臓がざわざわとした。
そして、大人であると同時にズルイ人。
『それじゃ、おやすみ桃ちゃん』
『……あ、あの』
『ん?』
『どうして、……はぐらかすんですか』
『……』
『私まだ、聞いてません。聞けてません』
“――おれが医者を目指している理由はね、おれみたいな子を一人でも救ってあげたいと思ったからなんだ”
彼は、それだけ言って柴犬のモモちゃんに話を逸らした。『聞いて欲しくなかったらわざわざ連れてきてない』って、言ってもくれたのに。
『そんなにおれとの時間楽しかったんだあ』
『……え?』
『それともお、みんなには内緒の“秘密の時間”にドキドキしたのかな?』
『……っ!』
そうやって話を逸らして。私の反応を見て楽しんで。
それでも騙されまいとする私に、まるで、我が儘を言う子どもに言い聞かせるみたいに。
『今夜はもう遅いから、また今度』
そんな風に言われたら、それ以上何も言えないこと知ってるから、そうやっておちょくってくるんだ。



