町の小さな小児科病院前は、その日も人で溢れかえっていた。
「すみません、ちょっと。……と、通してください!」
家に帰るのも一苦労。平穏な日常はどこへやら。
それもこれも、全部みんな、あの人のせいだ。
「……ふう。ただいまー。何、今日はどうしたの?」
苦労して人という人を掻き分け。なんとか扉を開けると、いつもの顔見知りの子どもたちが嬉しそうに私を出迎えてくれる。けれど、そこに母親たちの姿はない。
じゃれてくる近所の子どもたちをしばらく構ってあげていると、私の声に気付いたのか奥から父と母が顔を出し出迎えてくれる。
父も母も、若い頃は近所の大きな病院で働いていて、昔から全国で講演を開いたりするほどとても有名だったらしい。けれど訳あって二人はその大きな病院を出て、今はこうして小さな病院に拠点を移し、小児専門で医師を続けていた。
そんな彼らの姿は、いつ見ても楽しそうだ。……今日もまだもう少し忙しそうかな。
苦笑いする彼らに、家のことは任せてとアイコンタクトを送り、さっさと病院の奥に消えようとした――つまり家に帰ろうとした時だ。
「ああー!」
両親の向こう側から一人、ぴょこんと顔を出す。
……出たな。ラブリー宇宙人。そして、私の平穏を奪った犯人め。
「おっかえりい~!」
母親たちの悲鳴が上がる。そして、病院の前に集まっていた女子高生女子大生たちの奇声も上がる。
そう。彼女たちの目的は全て、このラブリー宇宙人。
ぴょんぴょんと何がそんなに楽しいのか、ものすごい笑顔と可愛さをそれはもうふんだんに振りまいて近付いてくるので、……思わず後退った。
いつも思うが、……なんなんだこいつは。自分が可愛いと思ってやってるのか。
大学四年にもなって恥ずかしくないのか。もっと男らしくなろうとか思わないのか。
「おかえり~」
「……はあ」
「ん~?」
「……た、……ただいま、帰りました」
「うんうんっ。おかえりい~!」
「…………」
うん。私より背の低い彼はそんなこと思わないんだろう。
今日も、見ていて疲れるくらい元気なんだけど、この人。



