とある真夏の夜。
『………………』
異様に、電話相手に訝しまれていた。
“――崖の上に咲いてる花取ってこいだの、砂漠の木の根っこ取ってこいだの。いっつも無理難題言ってくるのはそっちの方でしょ? 嫌だよ。何言っても聞いてあげない。それに今は、他のことに気を割く余裕なんかないんだってば”
『………………』
そんな風に言ってたじゃんって、言いたげな間だな……。
それにそもそも、こちらから電話をかけたことなんか……うん。ないかもしれない。ろくでもないこと頼まれそうだったし。
“折り入ってお願いが――”
けど、この胸騒ぎを、知っている気がするから。たとえろくでもないことを頼まれたとしても、そうしたんだ。
「……この間さ、何か言ってたよね? それってさ、もしかして――」
だから。その、いつまでも焼き付いて消えない姿を、見て。聞いて。
「……うん。いいよ」
そして決意した時にはもう、きっと捕まっていたのかもしれない。



