すべての花へそして君へ③


 とある真夏の夜。


『………………』


 異様に、電話相手に訝しまれていた。



“――崖の上に咲いてる花取ってこいだの、砂漠の木の根っこ取ってこいだの。いっつも無理難題言ってくるのはそっちの方でしょ? 嫌だよ。何言っても聞いてあげない。それに今は、他のことに気を割く余裕なんかないんだってば”


『………………』


 そんな風に言ってたじゃんって、言いたげな間だな……。
 それにそもそも、こちらから電話をかけたことなんか……うん。ないかもしれない。ろくでもないこと頼まれそうだったし。


“折り入ってお願いが――”


 けど、この胸騒ぎを、知っている気がするから。たとえろくでもないことを頼まれたとしても、そうしたんだ。


「……この間さ、何か言ってたよね? それってさ、もしかして――」


 だから。その、いつまでも焼き付いて消えない姿を、見て。聞いて。


「……うん。いいよ」


 そして決意した時にはもう、きっと捕まっていたのかもしれない。