「そういえばさ、このリングって指にしないの?」

「え」

「それともいつかする?」

「それは……」

「あ! わかった! プロポーズの時だ!」

「えっ」

「ね! そうでしょ! 当たり?」

「…………」


 この時、無邪気な笑顔で日向を見つめる葵は知りませんでした。


「……さあ? ま、そのうちするんじゃない?」

「えー」

(今、まさに、首から外そうとしてたのに……っ)


 一緒に暮らす提案を受け入れてもらえた時に、ネックレスではなく指輪として、つけてもらおうとしていたことを。


「ねえねえ! いつなのさー! 勿体ぶらないで教えてよー」

「絶対教えねえ」


 そのことを彼女が知る日は来るのか否か。
 今日も今日とて平和な一日であったとさ。めでたしめでたし。