「……ね? 面倒でしょう?」
『……』
家族は大事だよ。当たり前じゃん。でもヒナタくんだって、わたしにとって大事な人に変わりないのに。
「どうして、いつもいつも、他のことばかり優先させてるんだろうって。自己嫌悪とヒナタくんへの申し分けなさとで頭がいっぱいになって……」
『だから電話したの?』
「……さっきはまだ、ちゃんと頭動いてなくて。でも、すぐに伝えなきゃって思ったから」
『そっか』
「すぐに答えられなくて、ごめん」
『優先させようという気があったことにオレは驚いているけどね』
「ふざけないでよ」
『本心だけど』
確かに、ヒナタくんをほっぽってあれやそれやといろんなことをしていたのは否めない。けどそれは、ヒナタくんとこれからの時間を大切にするために、心を鬼にして自分に言い聞かせて、一生懸命頑張ってきた結果であって。
「最終的にはヒナタくんを思ってやってたことなんだよう……」
『最終的には結婚するじゃん?』
「……ぅえっ?」
『あ。いやでも結婚がゴールってわけじゃないしなあ。うーん』
「……え? え??」
『ま、いっか』
(ま、いっかで終わらせるの!?)
『で? するの? しないの?』
「し、しますとも……!」
『……うん。よし』
うんうん、て。
なんか、電話の向こうで満足げに頷いてる様子が目に浮かぶんですけど。
『はあ。……落ち着いた?』
「……え、ええ。まあ……」
というか、驚きすぎて涙引っ込んじゃったよ。
あれですか。ビックリ水の要領ですか。吹き零れないようにぶっ込んできたんですかね。
『ていうかさ、オレの話ちゃんと聞いてた? 今すぐ同棲したいから返事をくれって、言ってるわけじゃないんだよ?』
「……うん。ごめんなさい」
『気付いてんならいいよ。それに、そんなこと思わなくていい』
「……だって」
『悩むってことは、真剣に考えてる証拠でしょ? 家族みんなのことも、オレのことも』
「……でも」
『だから、ありがとう。一生懸命考えてくれて』
「ひなたくん……」
ていうか、オレが一緒に暮らしたいって言ってんだから、申し訳ないとか思わなくていいんだってと。そういうのも考えてるってことを、伝えたかっただけなんだからと。
少し呆れた声の中に、彼の不器用なやさしさが滲み出ていた。
『……ま、あおいの考えはわかったよ。自立したいって気持ちもわかる。オレだってそうだし』
「そっか」
『……でもそれってさ、一人暮らしじゃないとダメなわけ?』
「え? だって、自立だよ?」
『たとえば、二人暮らしとか』
「え?」



