
「……《件名:僕らの未来》……」
これが、きっと彼が描いた作品なのだろう。なんとなくだけど、彼の、考えや思いがわかる気がする。
詰め込まれたそれに、思わず笑みがこぼれ落ちた。
「もしもし?」
『……なんでオレなんですか』
「首尾はどうかなと思って」
『……どうも何も、朝から最悪なんですけど』
『どうしてくれるんですか……』と、すでにお疲れのご様子のレンくん。
メールの遣り取りだけだった彼の方は、どうやら差別は感じていないようで何より。もとよりそんなつもりは更々ないのだけれどね。
「いや、わたしもまさか、ここまでなるとは思ってなくて」
『ま、ついぽろっと口を滑らした奴が悪いんだと思いますけど』
ぽろっと?
『なんか、朝から上機嫌だったんですよね。気持ちもわからなくないですけど』
『おいユッキー。まさか、今朝のこと喋ってんじゃねーだろうな』
『まさかじゃなくてもそうだ』
『やめろって。また機嫌が悪くなるだろ』
『正直底辺だから、これ以上悪くなることはないだろ』
……え。どれだけ機嫌が悪いんだろ。
『お前もお前だ』
「えっ?」
『電話する相手が違うだろ。そのせいでまた余計教室内に不穏な空気が漂ってるってのに』
「……んと、怒らせちゃったみたいだから、今どんな様子かなって訊きたくて」
『最悪ですね』
「おう……」
『最強に拗ねてんなこりゃ』
「ありゃりゃ」
『別に拗ねてないもん』
「……そうなの?」
『……っ、そうなの!』
『いや。拗ねてるでしょ』
スピーカーにしているのか、いろんな人の声が代わり代わりに聞こえてくる。
そして、どうやらお着きになったらしい。聞こえた声は、少し息が弾んでいた。
『……ていうか誰?』
「わ、わたし! わたしだよ!」
『わたしわたし詐欺?』
「か、彼女に向かって詐欺とな」
『嘘嘘。おはよ。昨日はチョコありがとね』
「……あ」
『ん?』
「……う、ううん。どう、いたしまして」
泊まったことは、みんなには内緒なのかな。それについては触れないでおくことにしたけれど、声聞いただけで結構クるものが……。
『……それで? なんで電話してんの』
「実は昨日、オウリくんには手渡しできなくて」
『あー、だから拗ねてんの』
『だから拗ねてないってば』
『氷川。オレも手渡しされてないんだから、一緒じゃないか』
「ついでに言うと、一番酷い扱い受けてるのはカナデくんだからね。メールの遣り取りもなければ、チョコユズちゃん経由だから」
というより、恋人たちのお邪魔はしたくなかったってだけだけど。連絡も何もないということは、二人で素敵な日を過ごしているに違いない。勝手にそう思ってる。



