すべての花へそして君へ③



「……《件名:僕らの未来》……」


 これが、きっと彼が描いた作品なのだろう。なんとなくだけど、彼の、考えや思いがわかる気がする。
 詰め込まれたそれに、思わず笑みがこぼれ落ちた。


「もしもし?」

『……なんでオレなんですか』

「首尾はどうかなと思って」

『……どうも何も、朝から最悪なんですけど』


『どうしてくれるんですか……』と、すでにお疲れのご様子のレンくん。
 メールの遣り取りだけだった彼の方は、どうやら差別は感じていないようで何より。もとよりそんなつもりは更々ないのだけれどね。


「いや、わたしもまさか、ここまでなるとは思ってなくて」

『ま、ついぽろっと口を滑らした奴が悪いんだと思いますけど』


 ぽろっと?


『なんか、朝から上機嫌だったんですよね。気持ちもわからなくないですけど』

『おいユッキー。まさか、今朝のこと喋ってんじゃねーだろうな』

『まさかじゃなくてもそうだ』

『やめろって。また機嫌が悪くなるだろ』

『正直底辺だから、これ以上悪くなることはないだろ』


 ……え。どれだけ機嫌が悪いんだろ。


『お前もお前だ』

「えっ?」

『電話する相手が違うだろ。そのせいでまた余計教室内に不穏な空気が漂ってるってのに』

「……んと、怒らせちゃったみたいだから、今どんな様子かなって訊きたくて」

『最悪ですね』

「おう……」

『最強に拗ねてんなこりゃ』

「ありゃりゃ」

『別に拗ねてないもん』

「……そうなの?」

『……っ、そうなの!』

『いや。拗ねてるでしょ』


 スピーカーにしているのか、いろんな人の声が代わり代わりに聞こえてくる。
 そして、どうやらお着きになったらしい。聞こえた声は、少し息が弾んでいた。


『……ていうか誰?』

「わ、わたし! わたしだよ!」

『わたしわたし詐欺?』

「か、彼女に向かって詐欺とな」

『嘘嘘。おはよ。昨日はチョコありがとね』

「……あ」

『ん?』

「……う、ううん。どう、いたしまして」


 泊まったことは、みんなには内緒なのかな。それについては触れないでおくことにしたけれど、声聞いただけで結構クるものが……。


『……それで? なんで電話してんの』

「実は昨日、オウリくんには手渡しできなくて」

『あー、だから拗ねてんの』

『だから拗ねてないってば』

『氷川。オレも手渡しされてないんだから、一緒じゃないか』

「ついでに言うと、一番酷い扱い受けてるのはカナデくんだからね。メールの遣り取りもなければ、チョコユズちゃん経由だから」


 というより、恋人たちのお邪魔はしたくなかったってだけだけど。連絡も何もないということは、二人で素敵な日を過ごしているに違いない。勝手にそう思ってる。