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僅かに、握る手に力が入る。それにわたしは、気付かない振りをした。
「……ありがとう、ヒナタくん。一個言わせてくれる?」
「うん。何でも言って」
「ありがとう。じゃあ遠慮なく言うんだけど」
わたしは、玄関に置いてあった時計を思わず指差した。
見て! ちゃんと見てヒナタくん! これ、もう完全に遅刻街道まっしぐらだから!
「……ん?」
時計がどうかしたの? ……って。可愛く首傾げてるどころじゃないから。
ほら! さっさと立つ! 全力疾走すれば、君の足なら何とかぎりぎりイケるから!
「いつでもいいから、返事聞かせてね」
「おうとも! すぐに聞かせてあげるさね!」
いってらっしゃい! と。元気よく駆け出していった彼の背中をしばらく見送って。……パタン、と。玄関の扉を閉める。そのままズルズルと、地べたにへたり込んだ。
「ビックリが強すぎて、なんか、もうぐちゃぐちゃだ……」
いきなりぶっ込まれた爆弾。しばらくの間思考回路が停止してしまうくらいには、十分すぎる衝撃だった。
「あ。……でも、言わなきゃ。伝えなきゃ……」
その、ようやく動き始めた頭の中に、後からじんわりと染みてくる気遣ってくれていた彼の、あったかいやさしい気持ち。
まだ震えている足を何とか動かし、ダイニングに置いたままにしていたスマホへ、わたしは手を伸ばす。画面を開くと、いくらか通知が来ていた。メールと電話が2件ずつ。メールは昨夜と今朝。電話は今さっき。
(取り敢えず、電話は同じ人からだし……)
一旦、メールをくれてた人に連絡を入れてみよう。
〈アカネくん
お礼のメールありがとう!
進学の準備は順調かな?
美味しく出来たので
帰ってきたら是非食べてね!〉
メールを送ると、ちょうど見ていたのかメールではなく電話がかかってきた。
『あおいチャンおはよお』
「おはようアカネくん!」
『今大丈夫?』と少し眠たそうな声に、もちろんだよと返しながら小さく笑った。
『作品は昨日のうちに仕上げたから、今朝イチの電車で帰ってるんだ』
「そうだったんだ。乗り換えの電車待ち?」
『そうそう。目の前で行っちゃったからなんともやるせなく……』
「わかるわかる」
『次が来るまでちょっと時間があるから、よければそれまで付き合ってくれると嬉しいな』
「わたしでよければ是非に」
僅かに、握る手に力が入る。それにわたしは、気付かない振りをした。
「……ありがとう、ヒナタくん。一個言わせてくれる?」
「うん。何でも言って」
「ありがとう。じゃあ遠慮なく言うんだけど」
わたしは、玄関に置いてあった時計を思わず指差した。
見て! ちゃんと見てヒナタくん! これ、もう完全に遅刻街道まっしぐらだから!
「……ん?」
時計がどうかしたの? ……って。可愛く首傾げてるどころじゃないから。
ほら! さっさと立つ! 全力疾走すれば、君の足なら何とかぎりぎりイケるから!
「いつでもいいから、返事聞かせてね」
「おうとも! すぐに聞かせてあげるさね!」
いってらっしゃい! と。元気よく駆け出していった彼の背中をしばらく見送って。……パタン、と。玄関の扉を閉める。そのままズルズルと、地べたにへたり込んだ。
「ビックリが強すぎて、なんか、もうぐちゃぐちゃだ……」
いきなりぶっ込まれた爆弾。しばらくの間思考回路が停止してしまうくらいには、十分すぎる衝撃だった。
「あ。……でも、言わなきゃ。伝えなきゃ……」
その、ようやく動き始めた頭の中に、後からじんわりと染みてくる気遣ってくれていた彼の、あったかいやさしい気持ち。
まだ震えている足を何とか動かし、ダイニングに置いたままにしていたスマホへ、わたしは手を伸ばす。画面を開くと、いくらか通知が来ていた。メールと電話が2件ずつ。メールは昨夜と今朝。電話は今さっき。
(取り敢えず、電話は同じ人からだし……)
一旦、メールをくれてた人に連絡を入れてみよう。
〈アカネくん
お礼のメールありがとう!
進学の準備は順調かな?
美味しく出来たので
帰ってきたら是非食べてね!〉
メールを送ると、ちょうど見ていたのかメールではなく電話がかかってきた。
『あおいチャンおはよお』
「おはようアカネくん!」
『今大丈夫?』と少し眠たそうな声に、もちろんだよと返しながら小さく笑った。
『作品は昨日のうちに仕上げたから、今朝イチの電車で帰ってるんだ』
「そうだったんだ。乗り換えの電車待ち?」
『そうそう。目の前で行っちゃったからなんともやるせなく……』
「わかるわかる」
『次が来るまでちょっと時間があるから、よければそれまで付き合ってくれると嬉しいな』
「わたしでよければ是非に」



