すべての花へそして君へ③


「……ごめん、何でもない」

「あ、謝んないで」

「ごめん、ほんと。変なこと口走った」

「変なことなんて。すごい嬉しかったのに」

「じゃあ泊まる?」

「それは……」

「知ってる」

「……ごめんね」


 通えない距離じゃないけど、ここから彼女の家はやっぱり遠いから。つい、我が儘になる。


「……あのね? 二日連続、お泊まりするのはあんまりよくないのかなって。その、ヒイノさんには、昨夜はヒナタくんのところにお世話になるって、伝えたから」

「……そっか。そうだよね」


 真面目なところも、彼女のいいところだ。


「ご、ごめんね?」

「え? なんで謝るの」

「だ、だって……」

「そりゃ残念だけど、オレはそういうの大切だと思うよ」

「え……?」

「だって、こそこそ恋愛したくないし。どうせなら堂々としてたいし」

「……ひなたくん」

「大丈夫。ちゃんとわかってるよ」


 これからを大事にしたいなら、今をもっと大事にしないといけないって。彼女の大事なものも大切にしたいって。オレも、そう思ってるからさ。そりゃ、やっぱり残念だけどね。

 お昼からは野暮用があるとのこと。時計に視線を移すと、一緒にいられる時間はそう多くなさそうだった。
 取り敢えず。彼女が用意してくれた絶品料理に舌鼓しながら、このあとの時間をどう過ごすか話をし。


「いや、片付け一択だから」

「ちょっと。残り少ない時間をそんなことで終わらすつもり?」

「そんなこととな! あの惨状を見てそんな悠長なことよく言う」

「取り敢えずはベッドに二人寝られるからいいんじゃない」


 虚を衝かれた彼女はというと、一瞬目を丸くしたあとブワッッと顔を真っ赤にさせた。
 言い返す気力よりも恥ずかしさが上回ったのか。頬を赤らめたまま、視線をわずかに落としちびちびと箸を付け始める。そういう表情するから、オレも我慢きかなくなるっていうのに。

 ふうと、ひとつ息を吐き。片付けについて話を戻した。


「オレは、ずっと散らかったままでいいけど」

「えっ!? ……な、何で?」

「だって、片付けに来てくれるんでしょ?」

「そ、そりゃもちろんっ!」

「オレに、会いに来てくれるんでしょ?」

「も、……もちろん?」