「……ごめん、何でもない」
「あ、謝んないで」
「ごめん、ほんと。変なこと口走った」
「変なことなんて。すごい嬉しかったのに」
「じゃあ泊まる?」
「それは……」
「知ってる」
「……ごめんね」
通えない距離じゃないけど、ここから彼女の家はやっぱり遠いから。つい、我が儘になる。
「……あのね? 二日連続、お泊まりするのはあんまりよくないのかなって。その、ヒイノさんには、昨夜はヒナタくんのところにお世話になるって、伝えたから」
「……そっか。そうだよね」
真面目なところも、彼女のいいところだ。
「ご、ごめんね?」
「え? なんで謝るの」
「だ、だって……」
「そりゃ残念だけど、オレはそういうの大切だと思うよ」
「え……?」
「だって、こそこそ恋愛したくないし。どうせなら堂々としてたいし」
「……ひなたくん」
「大丈夫。ちゃんとわかってるよ」
これからを大事にしたいなら、今をもっと大事にしないといけないって。彼女の大事なものも大切にしたいって。オレも、そう思ってるからさ。そりゃ、やっぱり残念だけどね。
お昼からは野暮用があるとのこと。時計に視線を移すと、一緒にいられる時間はそう多くなさそうだった。
取り敢えず。彼女が用意してくれた絶品料理に舌鼓しながら、このあとの時間をどう過ごすか話をし。
「いや、片付け一択だから」
「ちょっと。残り少ない時間をそんなことで終わらすつもり?」
「そんなこととな! あの惨状を見てそんな悠長なことよく言う」
「取り敢えずはベッドに二人寝られるからいいんじゃない」
虚を衝かれた彼女はというと、一瞬目を丸くしたあとブワッッと顔を真っ赤にさせた。
言い返す気力よりも恥ずかしさが上回ったのか。頬を赤らめたまま、視線をわずかに落としちびちびと箸を付け始める。そういう表情するから、オレも我慢きかなくなるっていうのに。
ふうと、ひとつ息を吐き。片付けについて話を戻した。
「オレは、ずっと散らかったままでいいけど」
「えっ!? ……な、何で?」
「だって、片付けに来てくれるんでしょ?」
「そ、そりゃもちろんっ!」
「オレに、会いに来てくれるんでしょ?」
「も、……もちろん?」



