すべての花へそして君へ③


「結局オレ、何にもしてやれなかったね」

「そんなことないよ?」

「じゃあ何したの。言ってみてよ」

「好きでいてくれたでしょ?」

「……」

「離れててもずっと。今もこうして隣にいてくれるじゃない」


 それだけで十分、力になってた。助かってたよ。ありがとう。


「……」


 それを、何もしていないというのに。何もしていないことを、彼女はありがとうと言う。


「……ねえ」

「ん?」


 それが、泣きそうなくらい、無性に嬉しくて。彼女の笑顔が、本当に愛おしくて。


「キス。……していい?」

「えっ」

「だめ……?」

「だ、だめというわけでは……んっ」


 この、胸に湧き上がってくる喜びを。あったかくてやさしい気持ちを。言葉にしたいのに、何て言っていいのかわからないのが少し、悔しい。もどかしい。


「……オレの方こそ、ありがとう」


 この口付けで、少しでもこの想いが伝わればいいなと思う。
 そう思いながら、何度も何度も、彼女のやわらかい唇に、そっと触れ続けた。


 ――――――…………
 ――――……


 体調がよくなると「おなか空いたでしょ」と、彼女は痛む腰を上げ台所で料理をし始めた。


「ねえ。やっぱり無理しない方が」

「大丈夫大丈夫。ヒナタくんは座って待ってて?」


 これもまた、お持て成しの一つなのだからと、彼女は手際よく何品もの料理を仕上げていく。鼻歌交じりに。とても楽しそうに。


「ねえ」

「ん?」

「このあとどうすんの」

「んーと、今日はねー」

「というか今日も泊まる? そしたらもう一日一緒にいられる」

「え? ……ふふっ。そうだね」

「てかもう泊まろうよ。その方が絶対いい」

「んーそうだね。そうしたいのは、山々なんだけど」

「嫌だ」

「え?」


 一緒にいたら、つい欲が出る。
 まだ、この幸せな時間を終わらせたくない。この、彼女の楽しそうな姿を見ていたい。彼女の楽しそうな声を聞いていたい。


「泊まってって」

「ヒナタくん?」

「お願い」

「……」


 なんであんたは、ここじゃないところへ帰るの。オレの隣が、あんたの帰る場所なんじゃないの。