――――――…………
――――……
案の定、風呂から出たあおいはぐったりしてしまった。
烏の行水なこともあって、体質的にすぐのぼせてしまうのだろう。今までで一番、ぐったりさせてしまった気がする。
「タオル。濡らしてきたから」
「ありがとう」
「気持ち悪くない? 氷枕作ってこようか?」
「大丈夫、ありがとう」
「……っ水、持ってくる」
「うん。ありがとう」
ソファーに横になる彼女が少し痛々しい。申し訳なさも相まって、しばらくの間甲斐甲斐しく彼女の世話をしていた。
水を飲むために起き上がった彼女が、突然おかしそうに笑い出す。
「別に、申し訳ないなんて思わなくていいのに」
「え。……出てた? 顔」
「ええ。全面に」
「……いや、だってさ」
「嫌だったら嫌って言うよ?」
「……嘘ばっかり」
「本当本当。ヒナタくんだから止めないけど」
「……結局止めないんじゃないの、それ」
「わたしだって、ヒナタくんに触れたいし」
「……」
「ね? だから、お互い様」
「だいぶ損してない? それ」
損なんて全然してないよと。優しい笑みを浮かべる彼女は、一気にコップの水を飲み干した。
そういえば、昨夜から何も口にしてなかった。次からは、少し多めに入れてあげた。
「あ。そうそう、紙袋ってこれ? 鞄もついでに持ってきた」
ソファー横に置いていたそれを取り出すと、彼女はそうそうと何度か頷いてオレの手から紙袋を受け取る。
「はい、これ。中開けて見てみて」
「……これが戦果?」
渡されたのは、A3サイズの茶封筒。中に何か入っているのか。あまりにも薄っぺらく、恐らく入っていたとしても紙一枚程度だろう。
彼女の視線に催促され、オレはその茶封筒を開けた。
┏ ┓
交際を許可する
好き勝手にしろ
大馬鹿者共めが
┗ ┛
……ハッキリ言って、バカはこいつだけだと思う。
そんな拗ねた文章の横には、誰かの拇印が押してあった。
「戦には犠牲が付き物でね。ただでは勝てなかったのだけど」
「何犠牲にしたの」
「往来で見つけた時は扱き使ってやるから、覚悟しとけって」
「つまり、たまには顔を見せに来いと」
「え?」
「ん? そういうことなんじゃないの?」
言葉通りに受け取ってしまったらしい彼女は、「そうか。そういうことだったのか」と、嬉しそうに頬を緩ませた。
「行く時は、よかったらオレも連れて行って。よくも彼女を扱き使ってくれたなって、一言物申してやりたいから」
「そうだね。二人で、ありがとうって、お礼言いに行こうねー」
そこは、言葉通りに受け取ってもらってよかったのに。
でも、こんなにもふざけたものだけれど、これは正真正銘本物。もうちょっと、きちんとした証明にはできなかったのだろうかと頭を抱えたいところだけれど。
「お疲れ様」
「うんっ」
これでようやく、彼女に課せられた責任に、幕は下ろされたようだった。
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案の定、風呂から出たあおいはぐったりしてしまった。
烏の行水なこともあって、体質的にすぐのぼせてしまうのだろう。今までで一番、ぐったりさせてしまった気がする。
「タオル。濡らしてきたから」
「ありがとう」
「気持ち悪くない? 氷枕作ってこようか?」
「大丈夫、ありがとう」
「……っ水、持ってくる」
「うん。ありがとう」
ソファーに横になる彼女が少し痛々しい。申し訳なさも相まって、しばらくの間甲斐甲斐しく彼女の世話をしていた。
水を飲むために起き上がった彼女が、突然おかしそうに笑い出す。
「別に、申し訳ないなんて思わなくていいのに」
「え。……出てた? 顔」
「ええ。全面に」
「……いや、だってさ」
「嫌だったら嫌って言うよ?」
「……嘘ばっかり」
「本当本当。ヒナタくんだから止めないけど」
「……結局止めないんじゃないの、それ」
「わたしだって、ヒナタくんに触れたいし」
「……」
「ね? だから、お互い様」
「だいぶ損してない? それ」
損なんて全然してないよと。優しい笑みを浮かべる彼女は、一気にコップの水を飲み干した。
そういえば、昨夜から何も口にしてなかった。次からは、少し多めに入れてあげた。
「あ。そうそう、紙袋ってこれ? 鞄もついでに持ってきた」
ソファー横に置いていたそれを取り出すと、彼女はそうそうと何度か頷いてオレの手から紙袋を受け取る。
「はい、これ。中開けて見てみて」
「……これが戦果?」
渡されたのは、A3サイズの茶封筒。中に何か入っているのか。あまりにも薄っぺらく、恐らく入っていたとしても紙一枚程度だろう。
彼女の視線に催促され、オレはその茶封筒を開けた。
┏ ┓
交際を許可する
好き勝手にしろ
大馬鹿者共めが
┗ ┛
……ハッキリ言って、バカはこいつだけだと思う。
そんな拗ねた文章の横には、誰かの拇印が押してあった。
「戦には犠牲が付き物でね。ただでは勝てなかったのだけど」
「何犠牲にしたの」
「往来で見つけた時は扱き使ってやるから、覚悟しとけって」
「つまり、たまには顔を見せに来いと」
「え?」
「ん? そういうことなんじゃないの?」
言葉通りに受け取ってしまったらしい彼女は、「そうか。そういうことだったのか」と、嬉しそうに頬を緩ませた。
「行く時は、よかったらオレも連れて行って。よくも彼女を扱き使ってくれたなって、一言物申してやりたいから」
「そうだね。二人で、ありがとうって、お礼言いに行こうねー」
そこは、言葉通りに受け取ってもらってよかったのに。
でも、こんなにもふざけたものだけれど、これは正真正銘本物。もうちょっと、きちんとした証明にはできなかったのだろうかと頭を抱えたいところだけれど。
「お疲れ様」
「うんっ」
これでようやく、彼女に課せられた責任に、幕は下ろされたようだった。



