すべての花へそして君へ③


「今日は凱歌を揚げたから、その報酬をね? ちょっくら、……あれ?」

(誰だろ、こいつに勝負挑まれた人。かわいそうに……)

「んーしょ。よいしょーっ」

「ん?」

「はあ。それをね? 教えてあげようと思うんだけど……」

「どしたの」


 よじ登ってきたかと思ったら、こてんと肩に頭を乗せてくる。そして何故か、彼女はもじもじし始めた。


「別に、今すぐじゃなくていいよ。一気にもらうのなんかもったいないし」

「えっ! わたしは、今言っておきたい……」

「そう?」

「でも……」

「だからどうしたの」

「……あの」


「玄関の紙袋。その中に入ってるの」と、彼女は部屋の扉を指差している。


「でも……ちょっと、その。う、動けなくて」

「……」

「も、持ってきてくれませんか?」

「いいよ。喜んで」


 恥ずかしげに身を捩る彼女の頭をそっと引き寄せ、唇を寄せる。


「無理させたね」

「だ、大丈夫だ」

「本当?」

「……ちょっと痛むくらい」

「動けないくらい痛いんじゃなくて?」

「というより腰が抜けて」

「……」

「起きるので精一杯……」

「抜かしてごめんね?」

「い、……いいから持ってきてくださいよ」


 何故か小声で始まったそんな遣り取りに二人クスッと笑い合う。
 ぽんぽんと彼女の頭をそっと撫でてから、手近にあった服に袖を通す。


「……あんまじろじろ見ないでくんない?」

「はっ! ごめん、つい」

「つい? 何?」

「やだやだやだ。見ないで聞かないでー」


 両手で顔を隠したところで、耳も、首まで真っ赤なのはバレバレなんだけど。


「何考えてたのエッチ」

「うわっと! ひ、ヒナタくん……?」


 そんな彼女を抱き抱えて部屋を出る。さすがにすっぽんぽんはオレと一緒で恥ずかしかったのか、手近にあった服で慌てて胸元は隠されたけれど。


「あのままあそこにいたら、ずっと抱き続ける自信があったので」

「!?」

「あーごほん。……ということなので、座るの大丈夫そうなら下に降りよ。つらかったらリビングのソファーに寝てていいし。あとここじゃ何もできないし」

「……うん。ありがと」

「でもその前に風呂。一緒に入ろ」

「あは。うんっ」


 嬉しそうに抱き付いてきた彼女が、もうあまりにも可愛くて。浴室内で我慢はきっと切れるだろう。
 心の中でそっと謝って、彼女の柔らかい体を抱き締め返した。