彼女が言うには、好きだよって言葉も、愛してるって言葉も、数を重ねても思いを届かせるには限界があると。
「そんなことないと思うけど……」
「離れてるとね、重ねた想いの分。やっぱりちょっと、寂しくなるの」
「……寂しい思い、させてごめんね」
「えっ? ひ、ヒナタくんがなんで謝るの」
「ま、オレもだいぶほっとかれたけど」
「ううっ……。それについては非常に申し訳ないところなんだけど」
こほんとひとつ。小さく咳払いをして。
「でもね? 抱き締めてもらったら、寂しかったのなんて吹っ飛んじゃった」
そして彼女は、ふわっと嬉しそうに、可愛く笑った。
言葉がダメなんじゃない。足りないんじゃない。一回抱き締めてもらったらもう、それ以上のものなんてないんだなって。自分以外の人のぬくもりを覚えてしまったら、他に安心できるものはないんだなって。
……そう、気付いたのと。
「だからね? えっと。愛の言葉をくれるときは、抱擁も特典で付けてもらえると」
「……ん?」
「ぎゅーって。ほら。目一杯抱き締めてもらえたら一石二鳥じゃない? 相乗効果が期待できそうじゃない?」
「……」
「……だめ?」
「なんか、愛の言葉のセールストーク聞いてるみたい」
「ち、違うよ。甘えてるの」
「甘えるの下手か」
「ごめんちゃい……」
「そこは素直に言ってみてよ」
「……してくれる?」
「あおいの力量次第」
そ、それは困った。ナンテコッタイ。
そんな風に頭を抱えたあおいも、すぐ意を決したみたいだけど。
「……だ。抱き締めて。欲しい……デス」
結局恥ずかしさは拭いきれず。つむじを見せてくる彼女は、最後尻窄みしながらそう甘えた。
「んー」
「……だ、ダメだった? な、何点……?」
「100点」
「ええっ」
驚いた表情の顔を最後に、オレはきつく、彼女の体を抱き締めた。
「……一万点満点中?」
「10点満点中」
「へっ? あ、甘過ぎやしないかい?」
「そんなことないよ」
いつもいじめてばかりなんだから。たまには、目一杯甘やかすのもいいでしょ。
「好きだよ」
「……!」
「オレは、言葉も足りないときがあるから。寂しくなったら、いつでも飛び込んでおいで」
「……に」
「に?」
「匂い、嗅いでもいい……?」
「……」
「ごめん。やっぱ今のなしで」
「あおいが、それでいいならいいけど」
「えっ! いいの!?」
若干鼻息荒くなってるのは、無視しておいて。
少し腕の力を緩め、彼女の額に、口付けを落とす。
「オレはもっと、違うことがしたい」
「え? 違うことって……、んっ」
「上、向いて。口開けて」
「……はい」
貪るような口付けに、必死に応えようと首に腕が回ってくる。昨夜の名残か。次第に彼女の体がわずかに震え始める。
さすがに、昨夜の今朝。体はまだつらいだろうから、あまり無理はさせたくないんだけど。
(止めらんなかったら、ごめん)
心の中でそう謝って、オレはゆっくりと彼女を組み敷いた。



