すべての花へそして君へ③


 彼女が言うには、好きだよって言葉も、愛してるって言葉も、数を重ねても思いを届かせるには限界があると。


「そんなことないと思うけど……」

「離れてるとね、重ねた想いの分。やっぱりちょっと、寂しくなるの」

「……寂しい思い、させてごめんね」

「えっ? ひ、ヒナタくんがなんで謝るの」

「ま、オレもだいぶほっとかれたけど」

「ううっ……。それについては非常に申し訳ないところなんだけど」


 こほんとひとつ。小さく咳払いをして。


「でもね? 抱き締めてもらったら、寂しかったのなんて吹っ飛んじゃった」


 そして彼女は、ふわっと嬉しそうに、可愛く笑った。
 言葉がダメなんじゃない。足りないんじゃない。一回抱き締めてもらったらもう、それ以上のものなんてないんだなって。自分以外の人のぬくもりを覚えてしまったら、他に安心できるものはないんだなって。

 ……そう、気付いたのと。


「だからね? えっと。愛の言葉をくれるときは、抱擁も特典で付けてもらえると」

「……ん?」

「ぎゅーって。ほら。目一杯抱き締めてもらえたら一石二鳥じゃない? 相乗効果が期待できそうじゃない?」

「……」

「……だめ?」

「なんか、愛の言葉のセールストーク聞いてるみたい」

「ち、違うよ。甘えてるの」

「甘えるの下手か」

「ごめんちゃい……」

「そこは素直に言ってみてよ」

「……してくれる?」

「あおいの力量次第」


 そ、それは困った。ナンテコッタイ。
 そんな風に頭を抱えたあおいも、すぐ意を決したみたいだけど。


「……だ。抱き締めて。欲しい……デス」


 結局恥ずかしさは拭いきれず。つむじを見せてくる彼女は、最後尻窄みしながらそう甘えた。


「んー」

「……だ、ダメだった? な、何点……?」

「100点」

「ええっ」


 驚いた表情の顔を最後に、オレはきつく、彼女の体を抱き締めた。


「……一万点満点中?」

「10点満点中」

「へっ? あ、甘過ぎやしないかい?」

「そんなことないよ」


 いつもいじめてばかりなんだから。たまには、目一杯甘やかすのもいいでしょ。


「好きだよ」

「……!」

「オレは、言葉も足りないときがあるから。寂しくなったら、いつでも飛び込んでおいで」

「……に」

「に?」

「匂い、嗅いでもいい……?」

「……」

「ごめん。やっぱ今のなしで」

「あおいが、それでいいならいいけど」

「えっ! いいの!?」


 若干鼻息荒くなってるのは、無視しておいて。
 少し腕の力を緩め、彼女の額に、口付けを落とす。


「オレはもっと、違うことがしたい」

「え? 違うことって……、んっ」

「上、向いて。口開けて」

「……はい」


 貪るような口付けに、必死に応えようと首に腕が回ってくる。昨夜の名残か。次第に彼女の体がわずかに震え始める。
 さすがに、昨夜の今朝。体はまだつらいだろうから、あまり無理はさせたくないんだけど。


(止めらんなかったら、ごめん)


 心の中でそう謝って、オレはゆっくりと彼女を組み敷いた。