汗で引っ付いている髪を掻き上げてやる。
乱れた彼女の頬は赤く。潤んだ瞳は熱っぽくて。……なんだか今、すごく君が愛おしい。
「ねえ。きす、して。ひなたくん」
「……ん。いいよ。口開けて」
酔い痴れるように、うっとりとあおいはキスを受け入れている。
第一段階突破したもんね。一人達成感感じるのも無理ないと思う。
けど。悪いけど。こっからはオレのターンだから。
「あ、ちょ、……ひなたくっ」
「ごめん。もうほんと限界」
「あっ。も、もうちょっとだけ待っ」
「待たない」
取り敢えず、「明日は動けなくなるかもしれないから先に謝っとくごめん」とだけ、言っておいた。
――――――…………
――――……
寝返りを打とうとして腕が動かないことに、寝惚けた頭が違和感を覚える。正直まだこの幸せなまどろみの中にいたい。
不思議と、気持ちはすっきりとしている。でも体は少し疲れて怠いかった。
(……きのう、なに、したっけ……)
けれど、惚けた頭は違和感の正体を知りたがっていて。半ば無理矢理、重い瞼をゆっくりと持ち上げた。
「ん……」
「――――」
え? 何? 天使?
天使がおる。天使がおるんだけどッ。
(……くそっ。あとちょっとなのに……っ)
「んん……」
「……!」
「……」
(はあ……)
仕方ない。録音も隠し撮りも諦めよう。
スマホに伸ばしていた手を戻し、そのまま眠る彼女の髪に触れる。やわらかい、猫っ毛の髪。指で掬うと、するりと滑らかに落ちていく。
顔にかかった髪をそっと掻き上げると、静かな寝息とともに気持ちよさそうに熟睡している彼女の顔が、ようやくちゃんと見えた。
ほんのり色付く頬。目尻にはまだ少し、涙の跡が残っていた。
(調子乗ったなー……)
初めから、無理させてるってわかってた。それでもやめてあげられなかったのは、オレもこいつも足りないって。まだ足りないって。今まで離れていた分の寂しさを、一気に埋めようとしたからで……。
でも、起きたら一応謝っておこう。寝る前は寝る前で謝ったけど、あおいがあまりにも可愛くて、もっと泣き顔が見たくなって、オレが煽った分もあるから。
“ヒナタくんを受け止められないほど、わたしは柔じゃないよ”
……いや。謝る前にお礼か。
「全部。全部、受け止めてくれて、ありがと」
寂しさも、つらさも、もどかしさも。悲しみも、痛みも、苦しみも。君が、愛しくて愛しくて仕方がないこの、……捻くれた愛情も。
「……愛してるよ」
幸せすぎて怖いって、こういうことを言うんだなって。今はよくわか――



