すべての花へそして君へ③


 確かに可愛かった。恥じらう姿も、何なら言い切った男気も。ちょっと嬉しかったのも認めようこの際。
 ……でもね。何度も言うけど。そういうのは男のオレが言う台詞であって。


「言いたかったから、言ったの」

「いや、うん。そうね。そうだろうね」

「ヒナタくんと、……その。そういうことしたいって、ちゃんと言わないとって」

「……」

「思ったのもあるし、……大事にしたかったから」

「……あおい」

「大事にする。一生、ヒナタくんのこと」

「……」


 だから、それも男のオレの台詞だって……。はあ。全く。

 彼女の肩に額を乗せた時、一瞬体がビクついたのは多分、ちょっと怒られるかもしれないと思ったのだろう。そんなことないのに。


「そんなにしたかったんだ」

「へっ?」

「だって、食べたくなったんでしょ? オレのこと」

「……」

「大事にしてくれて、ありがとう」

「……ひなたくん」

「オレも、あおいのこと大事にしたい。ずっと。一生。大事にする」

「……っ。うん」


 少し泣きそうなのか。わずかに俯く彼女の顎に指を添え、下からゆっくりと持ち上げるように口付けを送る。


「だから、オレももらってもいい? あおいのこと」

「……っ。うんっ」


 抱き付いてきた彼女から、キスの雨が降ってくる。額に、鼻先に、瞼に、唇に。啄むようなキスが、今はもう全てもどかしい。


「んっ、ふあっ」


 こんなんじゃ全然足りない。
 彼女の腰に腕を回し、後頭部を掴んで押さえつける。もっと。もっと。口の中を犯され、絡み合う舌に息も苦しいのだろう。酸素を求めて、肩に乗せられた手に力が入る。でも逃げ腰になる彼女を逃がすまいと、もっと深く、深く厭らしく絡ませた。

 そして、腰を抜かしそうになったのか。彼女は膝立ちでもつらくなったようで、オレにもたれかかるように体を寄せた。


「おいで。ゆっくりでいいから」

「はあっ、はあっ。……っ、え?」


 そっとあてがったそれに、回らない頭も理解できたのだろう。真っ赤な顔して戸惑う彼女に、少し笑いながら。


「……じゃあ、少しだけね」


 目の前の、少し汗ばんだ肌に唇を寄せた。
 快楽に、我慢できない声が上がる。手の平で触れると、まるで吸い付くような感触は、ずっと触れていたいほどしっとりとやわらかい。


「んっ。……あぁっ」


 いじめ抜かれた体には、わずかな刺激さえもう堪えられないだろう。それでも、彼女に触れ続けた。彼女を助けるとは名目で、オレの方がもう、本当に彼女をめちゃくちゃにしかねなかったから。


「……っはあ。……大丈夫?」


 ピタリと胸に頬をつけて息を整えていた彼女は、オレの声に小さく笑いながらそっと顔を上げた。


「……思ったより。痛くなかった、かも」

「かもなんだ」