すべての花へそして君へ③


「大丈夫?」

「だいじょうぶに見える……?」

「んー、何とか大丈夫には見える」

「ひなたくんかなり目いいんだね」


 両目1.0は、いい目に入るのかどうなのか。……ま。だいぶ調子を取り戻したようで何より。
 掻き上げた前髪の生え際へキスを落とすと、小さく声を上げながらわずかに体を震わせる。もしかしたら恐怖もあるのかもしれない。でも今はきっと、何をしても彼女は小さく反応を寄越すだろう。オレが、そうさせたから。


「あ。……ちょ、ちょっと待って」

「悪いけど、さすがに今日は止めないよ」

「そ、そうなんだけど。……そうじゃ、なくて」

「そうじゃないとは……」


 というか、今言うの? 今。この体勢で。


「……~~っ。ひなたくんっ!」

「えっ!? うわっ!」


 とか思ってたら、いきなり彼女に突き飛ばされたんですけど。


「あっ、あのですねひなたくん」


 そんでもって上に乗っかられた。
 ていうか、この体勢。気付いてねえんだろうなー多分。なんか必死だから。


「ちょっとですね。ひなたくんに、言っておきたいことと申しますか、一言申すと言いますか」

(すげえ眺め)

「言わねばならぬ、ことがありまして」

「え。何? 文句?」

「い、いや文句ではなく」

「……気持ちよくなかった?」

「っ、えっ?」

「ねえ」

「……い、いえ。その……」

「……」

「……あ、あり、がと」

「……ぶはっ。いいえ?」


 先程までの行為を思い出し顔を真っ赤にさせた彼女は、恥ずかしがりながらオレの上からそそくさと逃げていく。それを、体を起こして、俯きがちの彼女の熱い頬へ手を伸ばし、そっと止める。照れてると、恥ずかしがっているとわかっているけれど、それ以上は、今は離れて欲しくなかったから。


「あ、あのっ。ごめ」

「言いたいことって何?」

「え? ……え、と」

「どこか痛かった?」

「えっ? う、ううんっ」

「じゃあ、触って欲しくないところがあった? 嫌だなって思うことがあった?」

「……えっと。服で隠せないところにつけるのは、ちょっと気をつけて欲しい……けど。そうじゃなくって」

「うん」


 何か、あったならすぐ言って欲しい。でも、必死になって首を振る彼女は「違うんだよ」と、蚊の鳴くようなかすかな声で囁いた。


「……い?」

「ん?」


 頬に添えた手に、甘えるように。どこか愛おしげに触れる彼女は、恥ずかしそうに再び囁いた。今度は確かに、耳に届くくらいの大きさで。


「ひなたくんを、……もらってもいい?」

「…………」

「というか食べてもいいですかっ? てかもう食べさせて!」

「ぶっ! くっ、……あはっ。ははは!」

「な、なぜ笑う」

「笑わなきゃやってらんねえから」