すべての花へそして君へ③


(……よかった。おんなじこと、思ってた)


 お互いがお互いを同じように触れ合って、どれくらいか経った頃。気付けば吸い寄せられるように、どちらかともなくお互いの唇を重ねていた。一枚、もう一枚と。身に付けていた衣服を剥がし、お互いの肌を重ねていた。
 深く、何度も唇が重なる。口の中でさえ埋めたい隙間に、二人息を荒くする。

 いつもはあるのかと聞かれれば、正直言って首を傾げて曖昧に濁していただろう。
 でも今は、同じことを聞かれれば、自信を持って首を振る。

 余裕なんてもの、このクッソ可愛い彼女目の前にして、残しておけるわけがない。今日に限っては特に。


「ん……っ」


 合間に漏れ出る吐息が色っぽい。上気していく頬が愛らしい。


「はあっ。……んっ」


 オレも多分、人のことは言えないけど。こんなにも、欲に溺れた熱っぽい瞳は、今まで見たことない。
 寂しいと思っていたのは、二人とも同じ。満たされたいと思っていたのも、お互い同じ。


「……あ。やっ。だ、だめだめ……っ」


 与えられる快楽に、声をかすれさせた彼女は今、ベッドの上でオレに組み敷かれている。何度も何度も、胸を上下し呼吸を繰り返す。
 恥ずかしいんだろうと思って、途中で部屋の電気は落とした。それでもわかるくらいには、彼女の真っ白な肌はピンク色に色付いていて。


(はあ……。……っ、やべえ)


 いつも負けてばかりだからか。これは、彼女に対する優越感か。それとも征服感か。独占欲か。支配欲か。
 体中にキスをしたい。触れてないところなんて、ないくらい。全身にあとをつけて、いっそ噛み付きたい。もっと声が聞きたい。オレを必死に呼ぶ声も。甘く掠れた声も。もういっそ、掠れて掠れて、もう出なくなってしまうくらい乱れさせたい。


「……あ。ま、待ってひなたく」


 まだ息の整わぬ彼女の耳元に「ごめん無理」と、余裕のない声と吐息を落とし。必死になけなしの理性を掻き集めながら愛撫を再開したオレは、彼女の足の指先から髪の毛先まで。隅々まで。彼女が壊れてしまう寸前まで。愛した。

 総動員した理性のおかげか。取り敢えず、まだ意識はある。かなりぐったりはしてるけど。
 前にこいつも……それからミズカさんも言ってたけど、本当に体力だけは人並みらしい。オレの勝てそうなところが一つはあってよかった。


「……はあ。それ……」

「ん? これ?」


 体をベッドに重く沈めた彼女は、何度も酸素を吸い込みながら、オレが手を伸ばした箱に目線を動かす。


「それだけは開けるなって。チカくんが……」

「あー……、まあそうだろうね」


 決して疚しいものではないけれど。まあ疚しい気持ちがないかと言われれば、そうではないし。……ごほん。
 チカに見られたのは少し恥ずかしいが、それよりも感謝が大きいので今度お礼を言っておこう。