すべての花へそして君へ③


「ちょちょちょ、ちょっと待っておくれヒナタくん……!」


 彼女の体をそっと抱き抱えてリビングを出た後、階段を上って部屋へと移動している最中、彼女がオレの服を必死に掴んで止めようとしてくる。……あれ。こういうことじゃなかった?


「あの、……その。えーっと」

「……違う?」

「えっ? そ、その……」

「……?」

「ち、……違わない、です」

「そ? ならよかった」


 抱え直した彼女のこめかみに口付けを落として。気を取り直したオレは再び歩みを進めたのだけれど。


「ち、違わないけど違うの! というかダメなんだよ!」

「今更ダメとか言われても」


 誘ってきたのは、そっちでしょ。
 そうやって目で訴えてはみるけれど、彼女はというとイヤイヤと首を振りながら腕の中で暴れるばかり。


「そんなに嫌がられると、オレも流石にショックなんだけど」

「えっ。だ、だから違うんだって。ヒナタくんが嫌というわけじゃ……」

「じゃあ何の問題もないよね」

「いやいや、それがあったりするわけで……」

「なんで。何の問題があるっていうの。この期に及んで」

「決して、ヒナタくんに問題があるというわけじゃ」

「じゃああおいに問題があるの? 何? 生理?」

「違うけど!」

「……じゃあやっぱり抱かれたくないんだ、オレに」

「そんなことないよ……!?」

「じゃあ抱かれたい?」

「めっさ抱かれたいです……!」


 そんな、握り拳作ってガッツポーズされても。そこまでされると、流石のオレもちょっと……いやかなり緊張するんだけど。期待に応えられるかしら。
 妙な緊張を感じながら扉の前に立つけれど、オレよりも腕の中の彼女の方がよっぽど緊張しているらしい。なんか、奥歯ガタガタ言ってる気がするんだけど。


「……怖い?」

「う、ううううううううんんんん」

(どっちだろ)


 そっと下ろすと、彼女は小さく後退りをしようとする。離れていって欲しくなくて袖口をちょっと摘まむと、うっ……と止まってくれるけれど。


「あおい」

「違う! そうじゃ、なくて……」

「そうじゃないって?」

「お、……怒んない?」


 え? 怒られると思ってたの? 怖がって見えたのって、そういうこと?


「怒んない」

「ぜ、絶対?」

「怒られるようなことしたの?」

「……」

(え。何したんだろ)