「ちょちょちょ、ちょっと待っておくれヒナタくん……!」
彼女の体をそっと抱き抱えてリビングを出た後、階段を上って部屋へと移動している最中、彼女がオレの服を必死に掴んで止めようとしてくる。……あれ。こういうことじゃなかった?
「あの、……その。えーっと」
「……違う?」
「えっ? そ、その……」
「……?」
「ち、……違わない、です」
「そ? ならよかった」
抱え直した彼女のこめかみに口付けを落として。気を取り直したオレは再び歩みを進めたのだけれど。
「ち、違わないけど違うの! というかダメなんだよ!」
「今更ダメとか言われても」
誘ってきたのは、そっちでしょ。
そうやって目で訴えてはみるけれど、彼女はというとイヤイヤと首を振りながら腕の中で暴れるばかり。
「そんなに嫌がられると、オレも流石にショックなんだけど」
「えっ。だ、だから違うんだって。ヒナタくんが嫌というわけじゃ……」
「じゃあ何の問題もないよね」
「いやいや、それがあったりするわけで……」
「なんで。何の問題があるっていうの。この期に及んで」
「決して、ヒナタくんに問題があるというわけじゃ」
「じゃああおいに問題があるの? 何? 生理?」
「違うけど!」
「……じゃあやっぱり抱かれたくないんだ、オレに」
「そんなことないよ……!?」
「じゃあ抱かれたい?」
「めっさ抱かれたいです……!」
そんな、握り拳作ってガッツポーズされても。そこまでされると、流石のオレもちょっと……いやかなり緊張するんだけど。期待に応えられるかしら。
妙な緊張を感じながら扉の前に立つけれど、オレよりも腕の中の彼女の方がよっぽど緊張しているらしい。なんか、奥歯ガタガタ言ってる気がするんだけど。
「……怖い?」
「う、ううううううううんんんん」
(どっちだろ)
そっと下ろすと、彼女は小さく後退りをしようとする。離れていって欲しくなくて袖口をちょっと摘まむと、うっ……と止まってくれるけれど。
「あおい」
「違う! そうじゃ、なくて……」
「そうじゃないって?」
「お、……怒んない?」
え? 怒られると思ってたの? 怖がって見えたのって、そういうこと?
「怒んない」
「ぜ、絶対?」
「怒られるようなことしたの?」
「……」
(え。何したんだろ)



