テーブルの上に広げたそれに、「ありゃ」と一言返ってくる。
「待ってる間に」
「いいんだよいいんだよ! 遅くなっちゃったし!」
「その、美味しかった。まだ残ってるから、一緒に食べよ」
「うんっ! ありがとー!」
「でもねーそれだけじゃないんだよー。いい代物が手に入ってねーうっひっひ」と再び冷蔵庫を漁り、彼女は嬉しげにジャジャーンッとそのブツを見せつけてくる。
「見て見て! これね、前にテレビでやってたのをちょうど見て!」
(あ)
「いろんな料理にも使えるから、試しに買ってみたんだー。今日はね、これを使ってちょっとシャレオツな飲み物をお出ししようと」
「あ。あおいさんあおいさん」
手招きするオレに首を傾げる彼女だったけれど、少し様子がおかしいことに気付いたのか「どうかした?」と駆け寄ってきてくれた。
「ちょっと……さ、これ飲んでみてくれない?」
「え?」
差し出したコップに嫌な予感がしたのか、彼女の顔が僅かに歪む。口に入れた瞬間、むすっと頬が膨らんだ。
「ごめんって。これも待ってる間に見つけて」
「ヒナタくんがサプライズをどんどん台無しにしてく」
「……美味しくなかった?」
「美味しかったです」
「わたしが作ったのよりも……」と珍しく拗ねる彼女を宥めるのは、ちょっと新鮮で楽しかった。
「んっ。で、でもでも! これだけじゃないからね!」
「わかってるわかってる。はい、あーんして」
ジンジャーエールで胃が動き出してしまったのか。くーくーと切なげに鳴り始めたお腹に、慌て始めた彼女から事情を聞くと、今日はほとんど何も口にしてなかったんだとか。
「わたしが持て成すはずだったのに。あーむ、んっ」
「オレが楽しければいいんじゃない?」
「ヒナタくん楽しいの?」
「満悦です」
彼女膝に乗せてご飯食べさすとか。多分、もう一生ないと思う。というかあおいがさせてくれない。
お皿の上にものがなくなってきた頃。彼女のお腹も落ち着きを取り戻し始め、膝から降りた彼女はこほんと小さく咳払いをした。
「ヒナタくん、今日はデザートもあるんだけど、どうする?」
ちらりと見た時計は、もうすぐタイムリミットを告げる。最終に乗るには、楽しい時間をそろそろお開きにしないといけない。
「……ヒナタくん?」
「あ、ごめん。何だっけ」
「デザート。作ってるんだけど、お腹いっぱいならまたでいいかなって」
「なんで? 食べるって。何作ってくれたの?」
「フォンダンショコラ。温めてくるから、ちょっと待ってて?」



