すべての花へそして君へ③


 テーブルの上に広げたそれに、「ありゃ」と一言返ってくる。


「待ってる間に」

「いいんだよいいんだよ! 遅くなっちゃったし!」

「その、美味しかった。まだ残ってるから、一緒に食べよ」

「うんっ! ありがとー!」


「でもねーそれだけじゃないんだよー。いい代物が手に入ってねーうっひっひ」と再び冷蔵庫を漁り、彼女は嬉しげにジャジャーンッとそのブツを見せつけてくる。


「見て見て! これね、前にテレビでやってたのをちょうど見て!」

(あ)

「いろんな料理にも使えるから、試しに買ってみたんだー。今日はね、これを使ってちょっとシャレオツな飲み物をお出ししようと」

「あ。あおいさんあおいさん」


 手招きするオレに首を傾げる彼女だったけれど、少し様子がおかしいことに気付いたのか「どうかした?」と駆け寄ってきてくれた。


「ちょっと……さ、これ飲んでみてくれない?」

「え?」


 差し出したコップに嫌な予感がしたのか、彼女の顔が僅かに歪む。口に入れた瞬間、むすっと頬が膨らんだ。


「ごめんって。これも待ってる間に見つけて」

「ヒナタくんがサプライズをどんどん台無しにしてく」

「……美味しくなかった?」

「美味しかったです」


「わたしが作ったのよりも……」と珍しく拗ねる彼女を宥めるのは、ちょっと新鮮で楽しかった。


「んっ。で、でもでも! これだけじゃないからね!」

「わかってるわかってる。はい、あーんして」


 ジンジャーエールで胃が動き出してしまったのか。くーくーと切なげに鳴り始めたお腹に、慌て始めた彼女から事情を聞くと、今日はほとんど何も口にしてなかったんだとか。


「わたしが持て成すはずだったのに。あーむ、んっ」

「オレが楽しければいいんじゃない?」

「ヒナタくん楽しいの?」

「満悦です」


 彼女膝に乗せてご飯食べさすとか。多分、もう一生ないと思う。というかあおいがさせてくれない。
 お皿の上にものがなくなってきた頃。彼女のお腹も落ち着きを取り戻し始め、膝から降りた彼女はこほんと小さく咳払いをした。


「ヒナタくん、今日はデザートもあるんだけど、どうする?」


 ちらりと見た時計は、もうすぐタイムリミットを告げる。最終に乗るには、楽しい時間をそろそろお開きにしないといけない。


「……ヒナタくん?」

「あ、ごめん。何だっけ」

「デザート。作ってるんだけど、お腹いっぱいならまたでいいかなって」

「なんで? 食べるって。何作ってくれたの?」

「フォンダンショコラ。温めてくるから、ちょっと待ってて?」