わざと出した拗ねた声に、ぐっと彼女が言葉に詰まる。
(別に、何にも責任感じることないのに)
だって、今日は待ってる間とか超楽しみにしてたし。今日までの時間だって、頑張ってんのかな。今度いつ会えるのかなって思ってたらあっという間だったし。ていうか女子かオレは。
ま、そんな優しいところも好きだから何も言わないけど。甘んじて受け取るのがオレの主義。そして好きな子ほど虐めてしまうのがオレの困った性格だ。
振り返った彼女は、まだ足腰が復活していないのか。横になったまま、「だって、その、手続きとか、準備とか、探し物とか、いろいろやってて……」と申し訳なさそうに顔の前でイジイジと手悪さをしていた。
「でも、待たせた分すごいお持て成ししてくれるんでしょ?」
そんな彼女のお腹にこてんと頭を乗っけると、キュルキュルと小さく音が鳴った。それが可愛くて笑っていると、彼女の手がそっとオレの髪を梳いていく。
「喜んで、くれたらいいな」
「喜ばないわけないでしょ」
「わかんないよー。ヒナタくん変な人だから」
「あおいにだけは言われたくないよ」
「気紛れだし」
「そんなことないと思うけど」
「すぐ拗ねちゃうし」
「あおいがいるだけでこんなに嬉しいのに?」
「……」
そこまで驚かれると、オレも居たたまれないんだけど。ていうかあんたの中のオレってどこまで素直じゃないの。もう大分いろいろやらかしてきたと思うんだけど。
「ふふっ。やった。頑張った甲斐があった」
とか嬉しそうに言われたら、文句も何も言えないけど。そもそも文句なんてないけどさ。
起き上がる気配に頭を起こすと、すっくと立ち上がった彼女はわしゃわしゃっと髪を撫でた。「ちょっと待っててね~」と、ルンルンで台所の方へとスキップしていった彼女の背中は、見てるだけでこちらまで楽しくなる。
「あれ? ない……」
けれど、嫌な予感に申し訳なさが募る。
「あおい」
「んー? ちょっと待ってね、確かに冷蔵庫に入れてたんだけど」
「ごめん、食べた」
「え?」



