すべての花へそして君へ③


 わざと出した拗ねた声に、ぐっと彼女が言葉に詰まる。


(別に、何にも責任感じることないのに)


 だって、今日は待ってる間とか超楽しみにしてたし。今日までの時間だって、頑張ってんのかな。今度いつ会えるのかなって思ってたらあっという間だったし。ていうか女子かオレは。
 ま、そんな優しいところも好きだから何も言わないけど。甘んじて受け取るのがオレの主義。そして好きな子ほど虐めてしまうのがオレの困った性格だ。

 振り返った彼女は、まだ足腰が復活していないのか。横になったまま、「だって、その、手続きとか、準備とか、探し物とか、いろいろやってて……」と申し訳なさそうに顔の前でイジイジと手悪さをしていた。


「でも、待たせた分すごいお持て成ししてくれるんでしょ?」


 そんな彼女のお腹にこてんと頭を乗っけると、キュルキュルと小さく音が鳴った。それが可愛くて笑っていると、彼女の手がそっとオレの髪を梳いていく。


「喜んで、くれたらいいな」

「喜ばないわけないでしょ」

「わかんないよー。ヒナタくん変な人だから」

「あおいにだけは言われたくないよ」

「気紛れだし」

「そんなことないと思うけど」

「すぐ拗ねちゃうし」

「あおいがいるだけでこんなに嬉しいのに?」

「……」


 そこまで驚かれると、オレも居たたまれないんだけど。ていうかあんたの中のオレってどこまで素直じゃないの。もう大分いろいろやらかしてきたと思うんだけど。


「ふふっ。やった。頑張った甲斐があった」


 とか嬉しそうに言われたら、文句も何も言えないけど。そもそも文句なんてないけどさ。

 起き上がる気配に頭を起こすと、すっくと立ち上がった彼女はわしゃわしゃっと髪を撫でた。「ちょっと待っててね~」と、ルンルンで台所の方へとスキップしていった彼女の背中は、見てるだけでこちらまで楽しくなる。


「あれ? ない……」


 けれど、嫌な予感に申し訳なさが募る。


「あおい」

「んー? ちょっと待ってね、確かに冷蔵庫に入れてたんだけど」

「ごめん、食べた」

「え?」