すべての花へそして君へ③


 その果たし状は、晩飯食い終わってからゆっくり見てみれば?
 別れたチカに、そんなアドバイスをもらったので、戻ってからゆっくりとご飯はよく噛んで食べた。


「さってとー。何が書いてあるのかなー」

「くっついてくんなよ」


 テレビを見ているツバサの横にピッタリとくっついて、ビリビリとラブレターの口を破る。


「浮ついてんなあ」

「あ、わかる?」

「ソファーが揺れてる」

「だってだって、楽しみなんだもん」


 今日が何の日か、知らないわけじゃない。ただ、忙しいから今日は無理かなって思ってたけど。
 でも、帰ってきてるみたいだし。何の日かちゃんとわかってるみたいだし。


「ま。俺は午前中にもらったけどな」

「時間は関係ない」

「お散歩のお誘いも受けたけどな」

「それも関係ない」


 みんなのところへ配りに行ったんだろう。律儀なあいつのことだ。それこそ、本当にみんなに。


「余裕じゃん」

「まあね」


 だって、さっきチカに特別って言われたし。ていうか、何か準備してるらしいし。どこで何してんのかは知らないけど。
 楽しみじゃないわけがない。楽しみに決まってる。恋人になって初めてだし、正直期待しない方がおかし――


「何時ぞやまではグジグジ悩んでたってのに」

「その辺の記憶抹消しといてくんない?」

「今更無理だろ」

「……抹消したい」

「諦めろ」


 ツバサの言葉から逃げるように、封から出した手紙を読み耽ることに――。


二〇〇〇(フタマルマルマル)、拙者別宅ニテオ待チ申シ上ゲ候】


「「…………」」


 え。何故軍? 何故武士? マジで果たし状なのこれ。


 ――――――…………
 ――――……


 この扉を開いた途端、恋人に切り払われたらどうしよう。


「8時5分前か……」


 家の中は、明かりが点いていた。何か中で作業をしているのだろう、少しガタガタと物が動く音が聞こえている。


「いやいや、そもそもなんでガタガタ言ってるの? 何してるのあの人」


 自分の家だけど、一応インターホンを押してみる。すると、慌てふためいた音や「来ちゃったよ! どうしよう!!」なんて声が、家の中から響いてきた。ちょっと早く来すぎたらしい。