その果たし状は、晩飯食い終わってからゆっくり見てみれば?
別れたチカに、そんなアドバイスをもらったので、戻ってからゆっくりとご飯はよく噛んで食べた。
「さってとー。何が書いてあるのかなー」
「くっついてくんなよ」
テレビを見ているツバサの横にピッタリとくっついて、ビリビリとラブレターの口を破る。
「浮ついてんなあ」
「あ、わかる?」
「ソファーが揺れてる」
「だってだって、楽しみなんだもん」
今日が何の日か、知らないわけじゃない。ただ、忙しいから今日は無理かなって思ってたけど。
でも、帰ってきてるみたいだし。何の日かちゃんとわかってるみたいだし。
「ま。俺は午前中にもらったけどな」
「時間は関係ない」
「お散歩のお誘いも受けたけどな」
「それも関係ない」
みんなのところへ配りに行ったんだろう。律儀なあいつのことだ。それこそ、本当にみんなに。
「余裕じゃん」
「まあね」
だって、さっきチカに特別って言われたし。ていうか、何か準備してるらしいし。どこで何してんのかは知らないけど。
楽しみじゃないわけがない。楽しみに決まってる。恋人になって初めてだし、正直期待しない方がおかし――
「何時ぞやまではグジグジ悩んでたってのに」
「その辺の記憶抹消しといてくんない?」
「今更無理だろ」
「……抹消したい」
「諦めろ」
ツバサの言葉から逃げるように、封から出した手紙を読み耽ることに――。
【二〇〇〇、拙者別宅ニテオ待チ申シ上ゲ候】
「「…………」」
え。何故軍? 何故武士? マジで果たし状なのこれ。
――――――…………
――――……
この扉を開いた途端、恋人に切り払われたらどうしよう。
「8時5分前か……」
家の中は、明かりが点いていた。何か中で作業をしているのだろう、少しガタガタと物が動く音が聞こえている。
「いやいや、そもそもなんでガタガタ言ってるの? 何してるのあの人」
自分の家だけど、一応インターホンを押してみる。すると、慌てふためいた音や「来ちゃったよ! どうしよう!!」なんて声が、家の中から響いてきた。ちょっと早く来すぎたらしい。



