――――――…………
――――……
「あったかー?」
「なーいっ! チカくんはー?」
「あったら聞いてねーよー」
「そーだよねー」
『一緒に、家の中引っ繰り返して欲しいの!』
そう言ってチカくんを道連れにすること小一時間。タイムリミットが、近付いてきてしまった。
「ごめんねチカくん。変なことお願いしちゃって」
「そりゃいいけど……どうすんだよ」
「んー……まあ、何とかする! 何とかなる!」
「いや、そうじゃなくって」
「ん?」
「この惨状」
「あ……」
「どうすんだよ」
「な、何とかするから大丈夫……!」
「(何とかならねえだろ、この惨状)」
取り敢えず、ものすごく何かを言いたげなチカくんを玄関までお届けして。あ、そうそう。お礼とはまた違うんだけど。
「ハッピーバレンタイン! 手渡しできてよかった!」
「お。マジで? 今年は流石にもうもらえないかと思ってた」
「そんなことしないよー。そりゃ、彼氏さんも特別だけど、チカくんだってわたしにとっては特別だもの」
「さんきゅ。ま、その特別な彼氏のも頑張れよ」
玄関に置きっ放しにしていた買い物袋を指差して、ニカッとチカくんは笑う。うん、やっぱり君はこうでないと。
「あのな、アオイ」
「ん?」
「オレ、将来店開こうかなと思うんだ」
「お店?」
「夕方までは喫茶店で、夜は居酒屋とか。まあ、まだ全然何も決めてねえから、どうなるかなんてことわかんねえけど」
「……うんっ」
きっと、いろんなことを考えて、考え抜いた結果の道だったのだろう。君と、お婆様が、一緒に歩いて行くための。
「お前にはさ、聞いて欲しかったんだ。揉めてたのも知ってたし」
「よかったね、チカくん」
「おう。ありがとな。いい一日を」
「こちらこそありがとう! いい一日をっ!」
背を向けた彼の背中は、やっぱり前よりもずっと、大きくなっていて。なんだか少し、寂しい気持ちになったけど。
「あ」
「どした?」
「ね、ねえチカくん? もう一個だけ、お願いがあるのだけども……」
「んだよ。猫撫で声とか……可愛いけど、悪い予感しかしねえ」
(だって、つい頼み事しちゃうくらいには、頼りがいのある背中だったんだもん)
「何だよ。頼まれついでに聞いてやるから、遠慮なく言えって」
「……ちょっとね? 渡して欲しいものがあって」
「渡して欲しいもの?」
――――……
「あったかー?」
「なーいっ! チカくんはー?」
「あったら聞いてねーよー」
「そーだよねー」
『一緒に、家の中引っ繰り返して欲しいの!』
そう言ってチカくんを道連れにすること小一時間。タイムリミットが、近付いてきてしまった。
「ごめんねチカくん。変なことお願いしちゃって」
「そりゃいいけど……どうすんだよ」
「んー……まあ、何とかする! 何とかなる!」
「いや、そうじゃなくって」
「ん?」
「この惨状」
「あ……」
「どうすんだよ」
「な、何とかするから大丈夫……!」
「(何とかならねえだろ、この惨状)」
取り敢えず、ものすごく何かを言いたげなチカくんを玄関までお届けして。あ、そうそう。お礼とはまた違うんだけど。
「ハッピーバレンタイン! 手渡しできてよかった!」
「お。マジで? 今年は流石にもうもらえないかと思ってた」
「そんなことしないよー。そりゃ、彼氏さんも特別だけど、チカくんだってわたしにとっては特別だもの」
「さんきゅ。ま、その特別な彼氏のも頑張れよ」
玄関に置きっ放しにしていた買い物袋を指差して、ニカッとチカくんは笑う。うん、やっぱり君はこうでないと。
「あのな、アオイ」
「ん?」
「オレ、将来店開こうかなと思うんだ」
「お店?」
「夕方までは喫茶店で、夜は居酒屋とか。まあ、まだ全然何も決めてねえから、どうなるかなんてことわかんねえけど」
「……うんっ」
きっと、いろんなことを考えて、考え抜いた結果の道だったのだろう。君と、お婆様が、一緒に歩いて行くための。
「お前にはさ、聞いて欲しかったんだ。揉めてたのも知ってたし」
「よかったね、チカくん」
「おう。ありがとな。いい一日を」
「こちらこそありがとう! いい一日をっ!」
背を向けた彼の背中は、やっぱり前よりもずっと、大きくなっていて。なんだか少し、寂しい気持ちになったけど。
「あ」
「どした?」
「ね、ねえチカくん? もう一個だけ、お願いがあるのだけども……」
「んだよ。猫撫で声とか……可愛いけど、悪い予感しかしねえ」
(だって、つい頼み事しちゃうくらいには、頼りがいのある背中だったんだもん)
「何だよ。頼まれついでに聞いてやるから、遠慮なく言えって」
「……ちょっとね? 渡して欲しいものがあって」
「渡して欲しいもの?」



