「葵ちゃん、重要任務だって言ったのに」
「これ以上の重要任務ってありますか?」
任務:お父さん!
仕事内容:お父さんとして過ごす!
「本当にお父さんなんですから、もうちょっと一緒にいる時間作ってあげてくださいね」
「それは俺に言われてもどうにもできないよー」
「言っときましたから、作ってあげてください」
「え?」
歩みを止めた彼を振り返ると、まるで置いてけぼりの子どものような顔でこちらを見つめていた。
「……言ったんだ」
「はい」
「じゃあ、これで本当に君は、俺の上司じゃなくなるんだね」
「……はい」
俯いた彼は、なんだか一回り小さくなったように見えた。……今にも泣き出しそうに見えた。
「でも、縁が切れるわけじゃないですよ。わたしと、シズルさんの」
「……」
「それから、わたしとボスも」
「……え?」
上げた顔は、どこか期待に満ちていて。
「『タダでは帰さない』と、そう言われました」
「ボスは、何て言ったの。君は、何を承諾したの」
それが、少しだけ可笑しかった。
「わたしは、まあ所謂OG扱いらしく」
「OG?」
「また、いつでも遊びに来いと。その時は、存分に仕事を振ってやると。そう言われました」
「……それって」
「はい。なので、その時はまた。一緒にお仕事よろしくお願いしますね?」
「……っ、ああ。もちろんだよ」
そうこうしていると、あっという間に駅に着いてしまった。
「わたしね? シズルさんはそろそろ指導する立場になってもいいんじゃないかなって思うんです」
「嫌だよ。俺は仕えてる方が性に合ってるから」
「そっちの方がラクですもんね」
「ハッキリ言わないでよ。お兄さん本気で泣くよ?」
両方の人差し指で泣き真似する彼に、思わず噴き出して笑う。お父さんでも、やっぱりまだ少し子どもっぽい。
「じゃあ、わたしから課題を一つ」
「……嫌な予感しかしないんだけど」
「下を育てましょうシズルさんっ。あなたならきっと、いや絶対できます!」
「……だから、さっきも言ったけど、俺には」
「だって、あなたわたしの部下でしょう?」
「……」
「同じことをすればいいんですよ」
「ハッキリ言うけど、同じことはできないよ」
「もちろんあなたらしく。わかりましたか?」
「……」
「お返事は?」
「……やるだけ、やってはみる」



