「やれやれ、とんだ酷い目に遭ったぜ……」
しかし、冷凍ビームから脱出したはいいものの、何も考えずに逃げたのでもう、ここはどこ? わたしは誰? 状態。
「……あれ? 葵ちゃん?」
誰!? 完全アウェーの中で、わたしの名前を呼んでくれる、あなた様は一体誰……!?
「………………?」
あれ。本当に誰? わたし、あなたにちゃん付けで呼ばれるほど親しかったですっけ。
「知り合いか? あ、彼女か」
「はい。僕の仕事の上司で、不倫相手で」
「……」
「嘘です。まだ女子高生ですよ。バイト先で仲良くなって」
「で、女子高生に手を出してるのか」
「滅相もないです。寧ろ僕の方がいろいろ使われているというか」
隣に立つ大学の先生らしき人は、わたしを一度じっと確かめるように見つめ。
「すまないな、君。彼がいろいろ苦労させているだろう」
「え? い、いえいえ」
「皆まで言うな。苦労が顔に出ている。それに、こいつの腹の黒さはよく知っているからな」
「えー酷いなあ教授ってば」
「じゃあ私は先に失礼させてもらう。何かあれば警備員を呼びなさい」と、本気か嘘かよくわからないまま、教授さんはわたしに気を遣って席を外してくれた。
「……もしかしなくても、シズルさんですか?」
「正解。わかんなかった?」
「それ、変装ですか? 眼鏡に……カツラまでつけて」
「大学生の“僕”は、これで通ってるから」
いくつもの顔を持っていると言っていたけれど、これは確かに、町中で擦れ違ったくらいじゃすぐにはわからない。眼鏡とカツラだけで、人ってここまで見た目の印象が変わるものなんだなと、ひしひし実感した。
普段は全然そうは見えないけれど、バッチリ大学生に見えるシズルさんと、構内を歩く。
「じゃあ、やっぱりこれって葵ちゃんのことだったんだ」
「へ?」
これとは一体なんぞや?
彼が見せてくれたスマホの画面には、何かの残像しか映っていない。
「これ桜大生のインスタなんだけど」
「ほう。インスタとは。全然やってないのでわかりません」
「まあ、その子が今日こんなことがあったってネットに上げてるんだよ。大学に、ものすごい猛者が現れたって」
「も、猛者?」
もしかして、この残像……って。



