オレは目を丸くした。
 ド直球に的を射貫いてきた言葉に、思わず笑ってしまうほど。


「あはは。ほんとだ」

「あと、変わらないことですかね。俺だったらそうして欲しいかも」

「……変わらないって?」

「んーと、極端な話で言えば、俺のせいで人生を棒に振るとか」

「そんなことはさすがに」

「普通の人は思ってなくても、普通になれない人は結構思ってたりしますよ?」


「どこかが不十分な分、些細な変化や感情には、結構敏感な方だと思うので」と、そんな風には思わないくらい、楽しそうに嬉しそうに彼は笑った。


「お友達? あ、彼女かな?」

「うん彼女。もうすっげー変な奴なの」

「そうなんだ! ははっ、ちょっとどんな子なのか会ってみたいな」

「今、ちょっと連絡取れないんだ。喧嘩したから」

「おおお。成る程成る程……」

「もう一つ訊いてみてもいい?」

「ん? 俺なんかで役に立てればいいけど」

「……もしよかったら、将来の夢、教えてくれない?」


 彼の持つそれは、身体内部に障害があることを示すマーク。これを付けている彼にとって、今のオレの質問は、これ以上ないほど酷いものだったかもしれない。


「俺が一緒にいられるまで、ずっと笑っていて欲しい」


 それでも彼は、真っ直ぐにオレの目を見て答えてくれた。
 決して濁すことなく、本当の夢を。


『ねえ知ってる? わたしも、ヒナタくん無しじゃ生きていけないんだよ』
『だからね、これからずーっと。おばあちゃんおじいちゃんになってもずっと、一緒に笑い皺作ろうね』

 ――ずっと、隣で笑ってて。


 ……ほんと、オレの何がいいんだか。オレの何が、あいつにそうさせたのか。正直、神経疑うけど。


「……女子ってさ、時々男より強いよね」

「あ、うん。それは俺も思ったことありますね」


 どうやら、思うことは同じらしい。二人して可笑しくなって笑い合った。


「ありがとう。お陰でいろいろ気付けた。そういえば、考え事してたって言ってたけど」

「え!? い、いや、考え事って言えるほどのものじゃ……」

「相談乗ってくれたお礼に、オレにできることがあれば言って」

「……えっと。ぜ、前回来たときに何がいいのかわからなくて、いっぱい自販機で飲み物を買ったんですけど……」

「うんうん」

「先輩が、『今日は私が!』って、張り切って買いに行っちゃったんです……」

「……え。帰り遅くない?」

「待っててって言われたけど、やっぱり俺っ、迎えに行ってきます……!」


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