すべての花へそして君へ③


 と、いうことがあり。


『痛い痛い痛い痛い!!!!』

『正当防衛!』

『俺がっ、何したって言うんだよ!』

『証言者がいます! 往生際が悪いですよ!』

『の、ノコノコついてきた方が悪っ――痛い痛い痛い!!!!』

『触られたこともそうですが、この素敵な学校にこんな不届き者がいることの方が大変不快です。このまま警察に行きますか』


 まさか学内で痴漢に遭うとは。ちょっと痛めつけて、警備員さんに『だいぶ反省しているみたいなので、お手柔らかにしてあげてください』とその彼を引き渡したけれど……。


「最後は俺だ!」

「た、大将……!」

「よろしくお願いしゃっす……!」


 その現場を目撃したというガタイのいい運動部の人たちに、次から次へと勝負を挑まれるという。
 もう一回言っとこ。なんでこうなった?



「騒がしいと思って来てみれば……」


 その人が現れたのは、その大将の背中をドオーンッと床につけた時だった。気付けば、取り囲むように人集りができていた。おお、ここまで大袈裟にするつもりはなかったのに。


「きゃー!」
「かっこいい!」
「すげえぞーそこの女子ー!」
「素敵よー!」


 結果、いっぱいファンができた▼


「流石に俺は、こんな大勢の人の中から一躍有名人になった君を掻っ攫うことなんて、そんなことできないよ」

「話しかけてる時点で、知り合いだとは思われてますよ」

「だから君が、俺を掻っ攫ってね。そうだな。囚われの王子を助けに来るお姫様、と言ったところかな」

「自分で言ってて虚しくないですかトーマさん」


 ぜーんぜん?
 誰よりも楽しそうに笑っている彼は、きっとここに集まっている誰よりも肝っ玉が据わっていることだろう。


「掻っ攫う時はお姫様抱っこですよ」

「よ、よーし葵ちゃん。カフェテリアでちょっとお茶でもしようか」


 いつぞやのことを思い出したのか。顔を引き攣らせながら彼は焦った様子でわたしの腕をとった。……そんなにみんな嫌いなのかな、お姫様抱っこ。


 構内にあるカフェに連れてきてくれた彼だったけれど、この後バイトが入っているらしく長居はできないそうだ。


「成る程、それがきっかけであんな大騒ぎになったんだ」


 椅子の上に器用に正座しながら、端から見ればお説教を受けているような体勢で先程の説明をしていると、何やらトーマさん。スマホで何かを調べ始めた。
 ……あの、トーマさん? 一体何をしていらっしゃるんでしょう。


「ん? 日本から排除しようと思って」


 喋んない方がよかったかもしれない。わたしに痛め付けられたのなんか屁でもないくらいの恐ろしさが、襲い掛かってくるかも。
 やっぱ、怒らせたらダメだわ、史上最強の魔王様。